認知症の理解とケアのあり方【講演抄録】
■認知症の周辺症状とは
アルツハイマー型認知症の症状には、大きく分けると「中核症状」と「周辺症状」があります。
「中核症状」というのは脳細胞が病気によって減っていくことによって起こる症状で、記憶障害や認知機能障害があります。最終的には寝たきりになっていく症状です。
一方「周辺症状」は、なんだか怒りっぽいとか、すぐ興奮するとか、一日中ふらふら歩きまわり夜中に突然出ていってしまうとか、排せつ物をこねて部屋を汚すといった、一見すると異常な行動です。こういう症状が、認知症に対して困ることであり、介護する際に大きな負担となるのではないかと思います。しかし、気をつけていただきたいのは、これらの症状は病気そのものの症状ではないということです。
最近ではこういう「周辺症状」のことを「行動・心理症状」(BPSDと略す)ということもありますが、非常にさまざまな症状で個人差があります。症状が全く出ない人もいれば、乱暴者のようになってしまい手が付けられないという人もいて、介護上よく問題になっています。
「中核症状」というのは脳細胞が病気によって減っていくことによって起こる症状で、記憶障害や認知機能障害があります。最終的には寝たきりになっていく症状です。
一方「周辺症状」は、なんだか怒りっぽいとか、すぐ興奮するとか、一日中ふらふら歩きまわり夜中に突然出ていってしまうとか、排せつ物をこねて部屋を汚すといった、一見すると異常な行動です。こういう症状が、認知症に対して困ることであり、介護する際に大きな負担となるのではないかと思います。しかし、気をつけていただきたいのは、これらの症状は病気そのものの症状ではないということです。
最近ではこういう「周辺症状」のことを「行動・心理症状」(BPSDと略す)ということもありますが、非常にさまざまな症状で個人差があります。症状が全く出ない人もいれば、乱暴者のようになってしまい手が付けられないという人もいて、介護上よく問題になっています。
■実は環境が大きくかかわる「周辺症状」
「周辺症状」は、病気とは直接関係がないので「行動・心理症状(BPSD)」と名がついているのですが、脳の病気から起こるものが20%くらいはあるのです。脳の病気から起こるものとしては、例えば前葉頭が萎縮し善悪の判断がうまくできなくなったために、他の人に手を出してしまったりするなどがあります。
また、約20%が個人因子です。個人因子としては、もともと頑固で人の言うことを聞かない性格だった人が認知症になり、ますますその性格が強くなって手が付けられなくなったケースもあります。
残りの約6割は環境因子で、その人が置かれている状況によって症状が出てきます。実は、「行動・心理症状(BPSD)」というのは、環境が大きくかかわっているのです。
■介護する人がどう対応するかが大きな環境因子
みなさんは認知症患者に対して、覚えていないことを「何度言ったらわかってもらえるのですか?」とか「何回も言ったでしょう」などと言っていませんか。そう言われても認知症患者は、脳の機能で覚えていられないのでもの忘れは仕方がないのです。その人の中には『怒られた』という記憶しかたぶん残らないですから、そんなことで怒っても仕方がないのです。
介護の現場では、認知症の人はたくさんいるので、少ないケアスタッフで多くの認知症の人を看なければなりません。ご家族も非常に忙しく疲れて仕事から帰ってきて「またこんなことやっている」と感じるかもしれません。しかし、それを当人に伝えても、当人は「何でそんなに怒られなければいけないのか」と思っているかもしれないのです。
徘徊しているおじいちゃんたちは何を探しているのか考えたことはありますか。トイレに行きたいと思っても、トイレのマークがわからないので、どのドアがトイレなのかわかりません。一生懸命歩いたあげくに人の部屋に入ってこっそり排せつし、下着が汚れて気持ちが悪いから脱いで置いてきてしまうのです。そうすると、他人の部屋に侵入し排せつして、そこを汚したあげくに裸になったと言われるのです。しかし、問題は、トイレがわからないということだけなので、トイレにきちんと誘導してあげれば、もしかしたらそんな行動には出なかったかもしれないのです。
私たちはこういう行動を見たときに、こんな行動をして困った人だと考えるのではなくて、この人はどういうサポートを必要としているのか、何に困っているのか、というように考え方を変えないといけないのです。
介護の現場では、認知症の人はたくさんいるので、少ないケアスタッフで多くの認知症の人を看なければなりません。ご家族も非常に忙しく疲れて仕事から帰ってきて「またこんなことやっている」と感じるかもしれません。しかし、それを当人に伝えても、当人は「何でそんなに怒られなければいけないのか」と思っているかもしれないのです。
徘徊しているおじいちゃんたちは何を探しているのか考えたことはありますか。トイレに行きたいと思っても、トイレのマークがわからないので、どのドアがトイレなのかわかりません。一生懸命歩いたあげくに人の部屋に入ってこっそり排せつし、下着が汚れて気持ちが悪いから脱いで置いてきてしまうのです。そうすると、他人の部屋に侵入し排せつして、そこを汚したあげくに裸になったと言われるのです。しかし、問題は、トイレがわからないということだけなので、トイレにきちんと誘導してあげれば、もしかしたらそんな行動には出なかったかもしれないのです。
私たちはこういう行動を見たときに、こんな行動をして困った人だと考えるのではなくて、この人はどういうサポートを必要としているのか、何に困っているのか、というように考え方を変えないといけないのです。
■初期の対応で安心できる環境を
2013年の読売新聞に載っていた精神科の中井久夫先生の記事に、「認知症の初期をどう過ごすかがその後の生活の質を決めるといっても過言ではない。初期の対応が改善されれば、初期が長引き、ひいては初期にとどまる可能性があり、初期の状態で進行しない状況をつくり出すことが私たちの対応で可能だ」と書かれています。
認知症の初期では、記憶と時間や場所に関する見当識が脅かされます。自分自身が危うくなり、周囲の様子に確信が持てなくなります。この時期に不安や変調を感じない人はいません。
認知症を最も悪化させるものは悪いストレス、すなわち不安や恐怖です。ですから、大変な介護をしたくなければ、本人が安心できる環境をつくることが近道です。それがきちんとできると、ケアはうまくいくかもしれないのです。
認知症の初期では、記憶と時間や場所に関する見当識が脅かされます。自分自身が危うくなり、周囲の様子に確信が持てなくなります。この時期に不安や変調を感じない人はいません。
認知症を最も悪化させるものは悪いストレス、すなわち不安や恐怖です。ですから、大変な介護をしたくなければ、本人が安心できる環境をつくることが近道です。それがきちんとできると、ケアはうまくいくかもしれないのです。
■家族の介護とプロによる介護
本人にとっては自宅が一番いい環境のはずです。しかし、自宅で険悪な雰囲気になってしまうぐらいだったら、時々外に行ってもらうほうがいい場合もあります。あるいは、ご家族が少し距離を置いて、ケアの人たちに主体に入ってもらうということもできます。今は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの24時間対応のサービスが介護保険で利用できるようになっています。
また、患者さんによっては、専門家が24時間ケアしたほうがいいという場合もありますので、そういう場合にはそれに対応したサービスが地域にあります(認知症グループホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど)。ここはプロが24時間対応しますが、家から引っ越すというのは、本人にとっては結構ストレスですから、慎重に見極める必要があります。ただ、環境が変わることで逆に元気になる方もいらっしゃいますので、一概にマイナスとは言えません。
また、患者さんによっては、専門家が24時間ケアしたほうがいいという場合もありますので、そういう場合にはそれに対応したサービスが地域にあります(認知症グループホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど)。ここはプロが24時間対応しますが、家から引っ越すというのは、本人にとっては結構ストレスですから、慎重に見極める必要があります。ただ、環境が変わることで逆に元気になる方もいらっしゃいますので、一概にマイナスとは言えません。
■最後に
認知症の問題は、認知症の人の問題ではなく社会の問題です。ですから認知症の「人」を問題にしないことが重要です。認知症の人が困っているからこの人が認知症になるわけです。一番困っているのは本人です。ですから、認知症を問題としない社会をみんなで作っていくことが重要で、そのためには認知症を正しく理解し、正しく対応できるということが必要です。
認知症の問題はいずれあなたの問題になります。その時にみなさん自身がこんなケアを受けたくないという世の中にならないように、今からみんなで一緒に取り組めるといいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
認知症の問題はいずれあなたの問題になります。その時にみなさん自身がこんなケアを受けたくないという世の中にならないように、今からみんなで一緒に取り組めるといいと思います。
ご清聴ありがとうございました。