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健康を維持する入浴のコツ-安全に入浴を提供するには

一般公開日:2022.9.18

 前回、入浴に伴う事故等についてお伝えしましたが、安全な方法で入浴を行ない、利用者の体調をよく観察すれば防げるものと考えています。介護における安全な入浴のためのポイントをお伝えしましょう。

  • 冬期は室内をあらかじめ暖めてもらう:
    在宅で療養されている患者さんの居室は意外と寒いことが多いです。訪問入浴を行なう際はあらかじめ家族へ連絡して暖房を入れてもらい少なくとも20℃程度は保つようにします。20℃以下の室温では寒さで血圧が上昇します。
  • 血圧が高い時、体温が高い時は入浴を延期するか短時間にする:
    以前私の行なった調査では入浴前の血圧が収縮期血圧(上の血圧)160mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)100mmHg以上、体温37.5℃以上の状態で入浴を実施すると、入浴事故等を起こすリスクが3倍以上になることが分かりました。

 一律に入浴を中止する必要はないかもしれませんが、普段より入浴を短時間にする、足湯だけに切り替えるなどの負担の少ない入浴法にすることをおすすめします。
 利用者や家族から入浴を懇願されることも多いと思いますが、家族へのリスク説明する場合の根拠となります。

  • 入浴前に水分補給:
    1回の入浴で800mlも脱水になります。入浴後だけでなく、入浴前にもできるだけ水分摂取を促しましょう。アルコール以外ならお好きな飲みもので構いませんが、脱水予防効果の高いミネラル入り麦茶やイオン飲料がおすすめです。
  • 体を少しずつ湯に慣らす:
    利用者に少しずつ湯をかけて体を湯に慣らすようにします。急にどっぶり湯に体を浸けると血圧上昇の原因になります。
  • 湯温と入浴時間:
    湯温は40℃で湯につかっている時間は10分以内とします。これ以上熱いと血圧を上昇させ、また長いとのぼせ(熱中症)の原因にもなります。
    熱傷の事故防止のためにも利用者の入浴前に湯温は必ずスタッフの手で確かめるか温度計で測定しましょう。

 以上のようなポイントに気を付けて、利用者が喜ぶ良いお風呂をぜひ提供してあげてください。

【執筆者プロフィール】

早坂 信哉/はやさか しんや

東京都市大学人間科学部教授。
お風呂・温泉と健康の関係を医学的に研究している医師。
一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。
医学博士。温泉療法専門医。「最高の入浴法」他著書多数。

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