認知症ケアのリスクマネジメント
第1回 認知症ケアの現場に多い事故・トラブルとは
◇ポイント1 認知症をめぐる現状を整理しよう
厚生労働省のデータによれば、平成22年に介護保険制度を利用している認知症高齢者は、約280万人に達しています。この場合の「認知症高齢者」とは、認知症の日常生活自立度がⅡ以上の人と定義されており、Ⅱとは「日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られるものの、誰かが注意すれば自立できる状態」を指します。
ただし、BPSD(周辺症状)による行動は、周囲の対応などによって大きく変化することがあります。「注意すれば自立できる」とは言っても、場所や時間によって不穏さが増すこともあり、Ⅱだからと言って「ケアの頻度は軽い」と考えない方がいいでしょう。つまり、ここで示された約280万人については、何らかの事故やトラブルなどのリスクが付きまとうことへの意識が必要です。
介護現場全体の比率で見ると、平成22年の介護保険の実受給者数は約490万人なので、約57%がⅡ以上となります。利用者の2人に1人以上は、認知症をめぐる様々なリスクがあり、そのことを意識しながらの専門性の高いケアが求められることになります。