認知症ケアのリスクマネジメント
第3回 アセスメントの充実で事故リスクを減らす
◇ポイント3 アセスメント情報を現場で共有し動かす
総合的なアセスメント情報を整理したら、次に現場でいかに共有するかがポイントとなります。シート類を整え、カンファレンスを実施し、経験の少ない職員に対して必要に応じてOJT(企業内で行なわれる企業内教育)などを実施するなどの方法が考えられますが、その前に必要なのが「情報共有がなぜ大切なのか」という動機づけです。
ここで述べた総合的なアセスメント情報は、事故を防ぐという目的のみならず、「その人のことを深く理解し、穏やかに過ごしてもらうこと」にも通じます。それは結果として、場当たり的なケアを改善し、職員の業務負担を減らすことになります。つまり、このアセスメントは利用者のためであるとともに、働く職員のためでもあるわけです。これを具体事例の紹介などを通じて理解できれば、情報共有のモチベーションが高まります。
また、認知症が少しずつ進行する中で、利用者の状態は少しずつ変化しています。この点を考えたとき、アセスメント情報は現場の気づきに基づいて常に更新されるべきものです。具体的には、日々の経過記録や申し送りなどを通じ、「見直しが必要である」というチーム内の声を基づいて更新していきます。
その時、情報共有のモチベーションが低いと「見直しの必要性」に気づく風土も弱くなります。その結果、情報と現実の間にズレが生じやすくなり、それが職員の負担を増して「気づきの余裕がなくなる」という悪循環を生み出します。組織横断的に事故防止委員会などをつくるケースが見られますが、そうした場でも「情報共有がなぜ必要か」という確認を常に行なっていきたいものです。
次回から具体的な事故防止の方策について考えていきます。まずは、認知症ケアを大きく左右するBPSD(周辺症状)の緩和をどう図るかについてふれましょう。