介護保険と障がい福祉の両支援を切れ目なく
地域共生社会に向けた「丸ごと」対応のビジョンにより、介護保険と障がい福祉の両制度にまたがる新たな仕組みも整えられました。
制度上では、障がい福祉サービスの利用者が65歳になると介護保険の給付が優先され、一部のサービスが原則として介護保険へと移ります(あくまで「原則」であり、市区町村の判断によっては64歳までの障がい福祉サービスがそのまま受けられるケースもあります)。
例えば、障がい福祉では、介護保険の訪問介護や通所介護に相当するサービスがあります(例.介護保険の「訪問介護」と、障がい福祉の「居宅介護」、「重度訪問介護」)。この「相当するサービス」が、障がい福祉から介護保険への移行の対象となるわけです。
問題は、介護保険サービスに移行すると、事業者が変わる可能性が出てくることにありました。自分のことをよく分かっている「なじみの事業者」から離れるのは、利用者にとって不安も大きいでしょう。もちろん、障がい福祉サービスを手がける事業者が介護保険サービスも一緒に手がけていれば、利用者は「なじみの事業者」と引き続きお付き合いできます。しかし、事業者が両サービスを手がけるには、障がい福祉と介護保険それぞれの制度上の基準を満たさなければなりませんでした。そのため、必要な人材を個別に確保しなければならないなどのハードルが生じていたわけです。
そこで、このたびの制度改正により、障がい福祉と介護保険のどちらかのサービス基準を満たしていれば、もう一方のサービス事業所の基準をクリアしやすくするという特例が設けられました。この特例によるサービスを「共生型サービス」といいます。利用者にとっては「なじみの関係が途切れてしまう」のを防ぎやすい環境が生まれたことになります。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
介護福祉ジャーナリスト。立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
2018年介護保険制度の改正について
介護保険と障がい福祉の両支援を切れ目なく