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あなたの介護は誰がする?

 かつて、「介護はプロに、家族は愛を」というキャッチフレーズがマスコミのあちこちに登場していました。しかし、最近ではその言葉はどこかに消え去り、「エンディング」や「終活」といった言葉を、至るところで見聞きするようになりました。
 そのことへの関心は30代、40代にも広がっていると聞いております。東日本大震災を機に「もしも・・・」を考える人が多くなったのでしょう。

 人間はこの世に生まれたと同時に、おしめの世話になり、やがて老いて、また、下の世話になって死を迎えます。どんなにお金があっても、どんなに地位があっても、どんな生き方をしてきても、ほとんどの人が人生の最後、生まれたときと同じようにおしめの世話になるのです。それは病院で1週間かもしれませんし、施設や在宅で何年かもしれません。いずれにしても、私たちは誰かの世話にならなければ、死にたどり着けないのです。
 その誰かも、私たちには選べません。家族での介護にも限界があり、多くの人の手が介護に関わります。ときには相性の合わない人の世話を受けなくてはならないこともあるでしょう。
 それでも、文句などを言っている場合ではありません。これに関しては、介護する側、される側、双方相手を選べないのはお互いさまなのです。
 「あのヘルパーさんの世話にはなりたくないわ」と思う人もいるでしょう。一方、ヘルパーさんにしても、「あの利用者さんの世話をすると思っただけで、胃が痛くなるわ」という人もいるはずです。どうすればいいでしょう?
 そこで、訓練が必要なのです。どんな人の世話になろうと、また仮にカチンとくるようなことを言われたとしても、ニコニコしていられる自分を今からつくっておくそれが肝心です。しなやかさとしたたかさが、老いた自分を守ります。

 さぁ、電車やバスに乗ったら、レッスンをしましょう。
 「もしかしたら目の前にいる人に介護されることがあるかもしれない」と意識してみることは貴重なレッスンになります。道を歩きながらもすれ違った人に、将来世話を受けるかもしれないと思うことです。このレッスンを繰り返すことで、心がたくましくなります。結果は介護されるようになったとき、あらわれます。
 以前、高級老人ホームを渡り歩いている女性の話を聞いたことがあります。その女性には何か不満があったのでしょう。しかし、介護はキラキラ輝くシャンデリアがするのではないのです。言うまでもなく、介護は、人間がするのです。気にくわないからといって次々にホームを変える人には、終の棲家はあるにしても、安住の地はないと考えるべきでしょう。安住の場所は、唯一自分自身の心の中にあるのですから・・・・。

【執筆者プロフィール】

羽成 幸子/はなり さちこ

1949年生まれ。カウンセラー、エッセイスト。祖父母、父母、姑、身内5人の介護経験をもとに、介護する側、される側の心のあり方をユニークな発想と介護哲学でわかりやすく紹介。「介護することは、自分の老いのリハーサル」と語り、全国各地で講演。ヘルパー養成研修講師、ボランティア研修講師も務める。
『勇気が出る介護の本』他、著書多数。

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