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私の人生、主人公は私

 人間に与えられた仕事のなかで、一番大変なのが介護だと思います。とりわけ、在宅介護の厳しさは、経験した人でないとわからないでしょう。いわば、自分の命を守りながら、もうひとりの大事な命を守るのですから、苦しさが伴うのも当然のことです。
 でも、それでも、私は介護を経験することをお勧めします。なぜなら、介護をすることによって、自分自身の老いや死への不安が無くなるからです。できれば、自分の親の介護をしてみるといいと思います。介護される親の姿は、いずれ来る自分の姿でもあるからです。憎しみや怒りの感情がわくこともあるでしょう。しかし、恐れることはありません。感情のすべてが愛から出たものだからです。
 日々、葛藤との闘いでもあります。その葛藤も恐れることはありません。やがて親の死に向き合ったとき、たじろがない力をくれるのも、それまでの葛藤だからです。「私たち、よくがんばったわよね」という思いで、親の死を受け入れられるようになります。
 介護には、格好の教科書も、模範となる回答もありません。どんなかたちでも、介護が終わったら100点だと思ってください。場所が病院であろうと、施設であろうと、在宅であろうと、とにかく終わったら100点です。

 私たちは介護をするために生まれてきたのではありません。自分の人生をよりよく生きるために生まれてきたのです。ですから、介護は人生の一部分です。介護が始まっても、同時進行で自分の人生を生きる。介護が自分の人生を保証してくれるわけでもありません。私の人生の主人公は私であるという軸を揺るがさず、介護に関わることです。
 私自身も、これまでの人生を振り返って、介護で自分の何かをあきらめたということはありません。興味や好奇心を旺盛にして、パッチワークのように自分の人生を広げてきました。
 同時に、介護の経験は多くの人との出会いも与えてくれました。介護のおかげで、さらに人生は広がりました。

 介護はひとりではできません。たくさんの手を借りましょう。世の中の人は皆ボランティアだと思いましょう。助けてもらうことは弱さではなく強さです。「助けてください」を声にしましょう。私自身、義母の介護中、「助けてください」を何回も言いました。ありがたいことに、断られたことは一度もありませんでした。自分の人生を広げるコツは、行動することです。そして行動とは生きること。何があっても、結局、あなたの人生の主人公は、やはり、あなたなのです。

【執筆者プロフィール】

羽成 幸子/はなり さちこ

1949年生まれ。カウンセラー、エッセイスト。祖父母、父母、姑、身内5人の介護経験をもとに、介護する側、される側の心のあり方をユニークな発想と介護哲学でわかりやすく紹介。「介護することは、自分の老いのリハーサル」と語り、全国各地で講演。ヘルパー養成研修講師、ボランティア研修講師も務める。
『勇気が出る介護の本』他、著書多数。

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あなたの介護を誰がする?

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