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自分自身のための介護と仕事の両立

『仕事と介護両立ハンドブック』(公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター)より抜粋して、3回にわたって紹介いたします。

 「退職か介護か」の二者択一ではなく、介護される側のためにも、自分自身のためにも、「働きながら介護をする」ということを選択肢に加えることも必要です。今回はBさんの事例をみてみましょう。
 独身者であるBさんは、共働きや思春期の子どもがいる家庭に比べて身軽です。遠距離介護は大変なのと、今後、母の認知症が進んでひとり暮らしが難しくなる状態になれば、仕事を辞めるのが良いのではと悩んでいます。

 しかし、ある日の新聞記事に、会社を退職して、介護に専念した人の多くが後悔しているとの調査報告が載っているのを読んで、自分に置き換えて考えてみたところ、次のことに気がつきました。

 Bさんの両親はずっと自営業だったために、年金額は基礎年金だけなので、それほど多くありません。母親は介護保険を利用して訪問介護やデイサービスを受けながらひとりで暮らしていますが、介護にかかるお金と生活費は年金額だけでは足りず、Bさんが毎月仕送りをしています。週末の帰郷にかかる交通費は負担となっていますが、もしBさんが会社を辞めてしまったら、収入はなくなりますので、介護にかかるお金や生活費は削ることになります。収入があることで、経済的な余裕につながり、介護にかかるサービスも手厚くできるのではとBさんは思いました。

 普段から地域に相談相手がいて、助け合える関係であれば良いのですが、そうでない場合、退職して介護だけの生活に入ると、人間関係が限られ、行動範囲が狭くなりがちです。仕事があるからこそ、頭の切替えができるのであり、介護で行き詰った時にも仕事が精神面で支えてくれることもあります。介護一色の生活になってしまうことで、ストレスがたまり、親にあたってしまうことも考えられます。逆に、介護以外の自分の世界をもつことで、気持ちに余裕が生まれ、親との良好な関係が保たれるというのも事実です。

 いったん退職してしまうと、40代男性が退職前と同等レベルの条件で再就職することは困難になってしまいます。もし再就職できたとしても新しい人間関係を築きながら、Bさんの能力が発揮できる職場であるとは限りません。親を看取ったあと長く続くBさん自身の人生は、退職することによって失うものが大きいのです。自分自身の年金も減ってしまいますし、定年退職の場合と、自己都合での早めの退職とでは、退職金の額もかなり違います。
 これらのことを考えて、Bさんは性急に答えを出さずに働き続けようと思いました。

 介護する人が幸せでなかったら、介護される人もきっと幸せにはなれないのではないでしょうか。
 次回は会社の立場から「介護と仕事の両立」を考えてみましょう。

 MY介護の広場では、ほかにも「仕事と介護の両立」に関するコンテンツがございます。
 ぜひご活用ください。

【執筆者プロフィール】

新田 香織/にった かおり

グラース社労士事務所代表。社会保険労務士。人事系アウトソーシング会社、社会保険労務士事務所に従事、その後グラース社労士事務所を設立。ワーク・ライフ・バランスを中心にした講演、執筆、コンサルティングを行なう。

関連著書紹介
仕事と介護 両立ハンドブック~コア社員の退職を防ぐ~

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