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認知症治療の第一人者 朝田隆先生に聞く

広場

いま日本には、認知症の人はどれくらいいるのでしょう?

朝田

65歳以上の高齢者の28%。862万人が認知症か認知症の予備軍だといわれています。2012年時点での推計ですが、862万人の内訳は、すでに認知症を発症している人が462万人、そのほかにMCI(軽度認知障害)と呼ばれる認知症の予備軍が400万人です。

広場

その862万人という数値は、厚生労働省の公式な資料や新聞やテレビでも繰り返し公表されていますが、そもそもその数値は朝田先生が代表を務められた研究チームによる調査結果に基づいているんですよね。

朝田

そうです。2013年に厚生労働省に報告した調査です。その中では、年齢層が高くなるにつれて認知症の有病率もぐんぐん高くなって、80歳以上に限れば2人に1人が認知症か予備軍という結果も出ています。

広場

もう、認知症は他人事じゃないという数値ですね。ところで、その調査はどのようなものだったのでしょうか?

朝田

「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」というタイトルで2013年に厚生労働省に報告したものです。2011年からの3年間全国11の都市で、合計で1万人以上の高齢者に対して、調査員が家庭を訪問して聞き取りし、その後医師が面接して記憶や認知力についての検査を行ない、さらに希望者全員に対し血液検査とMRI診断を実施するという極めておおがかりな調査でした。

MRIの大きな装置を載せた大型トレーラをカーフェリーに乗せましてね、島根県の隠岐の島まで渡ったり、本当に大変な調査でした。MCIという認知症予備軍の人がどれくらい居るのかを調査した、おそらく初めての本格的調査だったと思います。

広場

400万人いると推計される認知症予備軍、MCI(軽度認知障害)とは何でしょう?聞きなれない人も多いと思いますのでお教えください。

朝田

MCIとは認知症の一歩手前の状態のこと。もの忘れなどの症状はある程度あってもまだ日常生活に支障がある認知症は発症していない段階のこと。4年経過後には約5割の方が認知症を発症するとも言われています。ですからMCIであっても約半数以上の方は直ちに発症するわけではありません。

また、このMCIの段階で発見し、いち早く予防にチャレンジすれば、発症を予防したり遅らせたりすることはある程度可能です。予防に取り組むことによって、認知力や記憶力の低下といったMCIの症状が改善された例も少なからずあります。

広場

やはり、認知症は早期発見と早期予防が大事ということですね。

朝田

そうです。認知症をいったん発症してしまった後は、残念ながら治療法はまだないのが実情です。ですから、MCIの段階でいち早く発見し、できるだけ早くから予防のためのさまざまなプログラムに積極的に取り組めば、認知症発症前のMCIの段階で症状の進行をブロックできる可能性も高いことから、早期に取り組みを始めることが大切なのです。

広場

早期発見といっても、どうしたらよいのでしょう?

朝田

年齢相応のもの忘れは誰にでもあります。しかし、待ち合わせの約束を忘れてしまったり、用事があって出かけたのに、「あれ、自分はどこに行くつもりだったのか」を一瞬忘れた、などということが度重なるようでしたら、躊躇わずに「もの忘れ外来」などの認知症の専門医に相談することです。

広場

仮にMCIと診断されてしまったり、そうでなくともちょっと心当たりがあるといった方は、どんな予防プログラムが効果があるのでしょうか?

朝田

飲酒をほどほどにとか、よく眠る、青魚を食べるとか本当にさまざまな予防法が紹介されていますが、諸外国の研究などで効果が実証されているのはその中でも「運動」ですね。

筑波大学などが2001年から5年間実施した「利根プロジェクト」という調査では、茨城県の利根町の高齢者約3000人を追跡調査して、運動が認知症の進行や発症を予防する効果があることを実証しています。

広場

認知症予防に効果が期待できる運動プログラムとはどのようなものですか。詳しくお聞かせいただけますか?

朝田

まず一般的には有酸素運動。速足ウォーキング、サイクリング、水泳のような運動を週3回、1回20分以上継続的に習慣化して行なうことが効果的と言われています。あとは、脳と体を同時に使うような運動プログラムが認知力アップに効果があると期待されています。

これらは、なにもMCIや認知症と診断されてから始めるということではなく少しでも不安を感じたら今すぐ始めても構わないものです。認知症予防には「始めるのが早すぎた」という問題は全くないのです。

広場

先生、最後にひとこと。

朝田

認知症はもはや他人事ではありません。少しでも不安を感じたら、できるだけ早く発見し、できるだけ早く効果が期待される予防プログラムに取り組むことが大切です。不安を感じ始めたら、本人とご家族の安心のために、そのときが対策の始めどきです。

広場

ありがとうございます。

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