7.秘密保持
質問
地域のケアマネジャー会で開催する事例検討会で、担当する利用者さんの事例を発表しました。
もちろん関係者の氏名や住所などは伏せ字にするなど配慮しました。
しかし狭い地域なので類推され、家族の精神疾患などの事情が知れ渡ってしまいました。これは秘密保持違反になるのでしょうか?
回答
秘密保持違反となるのは、「個人の秘密」をもらすことを言います。
個人情報において、氏名や住所は個人を特定する情報といえます。そして氏名や住所自体は一般的に知りうる情報ですが、これが病状や介護状況などの情報と結びついた場合には、他人に知られたくない「個人の秘密」といえると考えられます。
したがいまして、事例発表において氏名や住所まで発表した場合には「個人の秘密」と言い得ますが、匿名とされていた場合には「個人の秘密」とはいえないと判断されるものと考えられます。
したがって、秘密保持違反にはならないと考えられます。
解説
1.秘密保持義務について
秘密保持義務とは、要介護更新の認定の調査を委託された指定居宅介護支援事業者や介護老人福祉施設等、もしくはその職員や介護支援専門員が当該業務に関して知り得た個人の秘密を漏らしてはならない義務のことをいいます(介護保険法第28条第7項)。
そして、かかる秘密保持義務に違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとされています(同法205条第2項)。
2.では、名前等を伏せた情報も「個人の秘密」といえるのでしょうか。
そもそも、介護保険法が秘密保持義務を定めた趣旨は、個人のプライバシーを保護しようとした点にあります。
プライバシー権とは、知られたくない情報を知られない権利といえるでしょう。
そこで、「個人の秘密」も客観的に見て他人に知られたくない個人の情報を意味すると考えられます。
介護に関する情報は、食事や排泄に関する情報、要介護者およびその家族の精神疾患など、他人に知られたくない情報ばかりです。
したがいまして、このような情報が、個人の氏名や住所と結びついた場合には、他人に知られたくない情報として「個人の秘密」にあたるものと考えられます。
このことから考えれば、関係者の氏名や住所等を伏せた状態で事例発表をしたのであれば、秘密保持義務違反とはならないでしょう。
もっとも、質問のように狭い地域での発表の場合には、類推されることも十分に予測できますので、より丁寧な配慮が必要となります。