9.成年後見制度
質問
老人デイサービスセンターでデイサービスを受けているGさんは、ひとり暮らしなのですが最近認知症の症状がときおり見受けられます。
成年後見制度の話をしたのですが、「私はまだ大丈夫」と言います。このような場合どのような対応ができるのでしょうか?
回答
Gさんのように、認知症の症状が時折あるものの、未だほぼ十分な事理弁識能力があるような場合には、任意後見契約を締結するという方法があります。
任意後見契約では、任意後見人を誰にするのかということや任意後見人の権限をどのようにするかについてすべて任意の契約で決定します。
もっとも、任意後見契約には3つの類型がありますので、どのような方法によることが適当かよく検討してから決めましょう。
解説
1.そもそも任意後見契約とはどんな制度なのでしょうか。
任意後見契約は、本人の判断能力が十分な間に、任意後見受任者と委託事項を決定し、委託した事務について代理権を付与する契約をいいます(任意後見契約に関する法律 第2条1号)。
任意後見契約を締結しておくと、本人の判断能力が不十分と判断されるに至った場合、本人のご家族かまたは任意後見受任者が、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任を申し立てます。
そして、家庭裁判所により任意後見監督人が選任されると、そのときから任意後見契約の効力が発生し、後見が開始されます。
任意後見契約により後見が開始しても、法定後見制度のように、印鑑登録が抹消されたりすることはありません。
2.任意後見契約の3つの類型にはどんなものがあるのでしょうか。
(1)将来型
十分な事理弁識能力を有する本人が契約締結の時点では受任者に財産管理等の事務の委託をせず、将来自己の判断能力が低下した時点で初めて任意後見人による保護を受けようとする契約形態です。
本人に十分な判断能力がある間に契約を締結し、本人の自己決定を尊重しようとするものです。
(2)移行型
財産管理を内容とする委任契約と任意後見契約を同時に締結します。
これにより、本人が十分な判断能力を有している間は、委任契約により任意後見受任者が本人の財産管理等の委託事務を行ない、本人の事理弁識能力が不十分となった後、任意後見監督人が選任された時点から、任意後見契約による事務の委託に移るという形態です。
判断能力が不十分とまではいかないけれど、財産管理行為に不安を覚える場合には(2)移行型が適しているといえます。
(3)即効型
本人が軽度の認知症となっている場合であって、任意後見契約締結直後に契約の効力を発生させる必要がある場合に用いられる契約形態です。
軽度の認知症ではあっても、契約締結時に判断能力(意思能力)に問題がなければ任意後見契約を締結することができます。
また、前述のように法定後見とは異なり、後見を開始しても資格制限等はありませんし、財産管理の委任について特別な意思を有している場合には、本人の意思を尊重することができます。