認知症ケアのリスクマネジメント
第2回 基本は「認知症を理解する」ことから
◇ポイント3 正確な状態の把握がすべてのスタート
中核症状からBPSD(行動・心理症状)がもたらされる流れを考えたとき、①認知症の原因となる病気そのもの(中核症状)がもたらすリスクは何か、②中核症状が本人の心理にどのような影響をもたらしているか、③②の心理がどのような行動につながるのかという3つの思考ステップが必要になります。
例えば、①の場合、病気の種類によっては中核症状が歩行や嚥下などに影響をもたらすことがあり、そこから転倒や誤嚥などの事故リスクが高まります。この段階で「想定されるリスク」は何かをまず考え対処を行ないます。
そのうえで②③という流れで本人を理解し、そこからどのような行動につながる可能性があるのかを予測しつつ、本人の心を落ち着かせたり、いざという時の安全の確保を考えた環境整備を行ったりする流れになります。
こうした思考が整理されていないと、目の前で生じた現象を対症療法的に抑えるだけのケアになりがちです。目の前の本人の行動をただ抑制するだけでは、かえって本人の心理を刺激して激しい反発行動に結びつきかねません。その昔、認知症高齢者に対する身体拘束が当然のように行なわれていた頃、拘束を嫌がって暴れた高齢者が車いすごと転倒するといった事故ケースも見られました。拘束や抑制は、リスクマネジメントにはなりえないということをもう一度確認する必要があります。
では、事故防止のための思考を進めていくうえでは何が必要なのか。それが介護職にとって必須といえる「アセスメント」です。この全ての基本となる「アセスメント」について、次回掘り下げてみることにしましょう。