重度の介護サービス利用者が増える中でのリスクマネジメント
第1回 介護現場で高まる療養等のニーズ。その背景とリスク
◇ポイント2 具体的にどのような事故リスクが増えるのか
介護サービス利用者の既往歴などにもよりますが、要介護の原因となる疾病の発症から日が浅い場合、①心身の機能低下が著しく進んでいる、あるいは、②疾病の再発リスクが高い、という状況をまず頭に入れなければなりません。
①の例でいえば、脳梗塞によるマヒがあった場合、それを補うための機能訓練が途上であると生活動作でのバランスが崩れやすくなります。また、経口摂取復帰に向けたケアの途上では、誤嚥などのリスクも高まります。ベッド上での生活時間が増えれば、栄養状態の悪化から褥そうなどのリスクが生じることもあります。
②の例でいえば、病後の回復状態が不安定な中で、気候・気温の変化により、脳梗塞の再発に注意が必要です。心疾患の既往歴がある場合にはヒートショックなどのリスクも注意する必要があります。何らかの異変が生じた場合、早期に察知したうえで、速やかに医療につなげることが介護現場としても不可欠なスキルとなるでしょう。
もう一つ注意しなければならないのは、さまざまな療養管理が求められる中で、その管理に関わるミスが重大事故に結びつくというケースです。介護現場で特に高まるリスクといえば、まずは誤薬でしょう。職員側のミスにとどまらず、認知症によって本人の服薬管理が不十分となるケースもあり、どのように対処していくかという課題も浮上します。
その他、介護職員による「たんの吸引」が可能になるなど、療養ケアにかかる範囲が広がる中でのリスク管理も必須となります。