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有料老人ホーム選びの成功失敗あれこれ

MY介護の広場に寄せられたご相談や声をもとに、「有料老人ホーム」を選ぶ10のポイントを体験談風にまとめました。
居心地の良い施設を選ぶポイントは、人それぞれです。ぜひお役立てください。

その1

「早めの準備」が大切!納得のいく施設選び

 近所に住む仲の良い友人が脳梗塞で倒れて入院しました。そして自宅に戻ることなく、息子さんが探してきた施設に入居しました。車で3時間かけて会いに行くと「こんな遠くに来たくなかった。でも家族が選んだんだから・・・」と寂しそうに言うのです。
 その姿を見て、自分が介護を受ける身になった場合を考えました。外出もままならなくなったら、自ら納得のいく施設を探すのは難しい、と実感しました。

 それをきっかけに、元気な今のうちに自分が入りたい施設を探そう、と有料老人ホームを見てまわることにしました。条件は、友人といつでも会えるように長年住み慣れた町に近いこと、そして娘や孫が1時間以内で遊びに来られるところ、と決めました。
 見学したのは5ヵ所です。犬好きな私は3匹の犬もセラピー犬として“入居”している、明るくアットホームな施設を選びました。私はまだまだ元気です。前の住居からバスで30分くらいなので、今までどおり友人と食事やカラオケを楽しんでいます。

(女性 75歳)

プロの一言

 「介護が必要になったら施設に入りたい」という人がいます。
 しかし、要介護状態になってからでは、自分で見学して選ぶのは難しくなります。結果として家族が選んだところに入るケースが多く見られます。将来、施設に入ろうと考えている人は、早めに準備を始めることが望ましいでしょう。

その2

周りの意見を「うのみ」にしてはいけない!?

 有料老人ホームを見学したとき、自分ひとりの見方に自信がもてないので、仲の良い友人についてきてもらいました。一緒に何ヵ所か見て回るうち、ようやく気に入った老人ホームが見つかりました。ところが友人は浮かない顔で「部屋が狭いし、スタッフがなれなれしすぎるのでは。インテリアの趣味も今一つね」と言うのです。
 でも、私から見れば、そうは思えません。自分が一生暮らすのだからと考え、友人には言わず5日間の体験入居をすることにしました。スタッフの方も気さくで心配りがよく居心地のよい環境でした。入居者さんの話だと、このホームは本人だけでなく家族も大切にし、また町内の人とも仲良く交流しているとのことでした。

 私はそこに入居することに決め、そのことを友人に話しました。すると、友人は「一緒に行ってあげたのに私の意見はムダだったのね」と言うのです。そして関係も少しギクシャクすることになってしまいました。
 しかし、価値観や感性は、友人が大切だからといって合わせるわけにいきません。今は自分で決断して良かったと思っています。

(女性 76歳)

プロの一言

 ご家族や親しい友人などは、本人のためを思っていろいろな意見を言ってくれるかもしれません。しかし、自分にとって居心地の良い場所は他人にはわからないところがあります。最終的には自分で決めることが大切です。

その3

たくさんの施設を見学すると見えてくる!

 自宅を売却して有料老人ホームに入居しようと決め、条件にかなう施設を10ヵ所ほど見学に行きました。探し始めたころは、ロビーのインテリアの豪華さに目を見張り、設備の充実度に心引かれ、友人もうらやましがるだろうな、などと内心誇らしい気持ちになりました。どの施設も、経営状態もよく、理念もしっかりしていて、甲乙つけがたく思えて迷いました。

 しかし、何ヵ所か見学するうちに、自分なりに選ぶ基準が明確になっていきました。プールやジムなどの共用部分の使い方も、自分の体力や性格を考えながら具体的にチェックすると、必要な設備と使わなくてもよい設備があることに気がつきました。
 結局、見学するたびに見えてきたのは「自分自身が何を大切に思っているのか。毎日どのように暮らしたいと考えているのか」ということでした。時間もお金も体力も使いましたが、今では、たくさんの施設を見学してよかったと思います。

(女性 70歳)

プロの一言

 条件にかなうところを最低でも3~4ヵ所は見学し、気に入った施設には体験入居をしてみましょう。体験入居の費用は1泊2日で1万円程度が多いようです。体験日数は1泊2日から長期まで施設によってさまざまですが、できれば1泊2日ではなく2、3泊以上して、自分のイメージする暮らしに合うのかじっくり判断することをお勧めします。

その4

食事の好みで選ぶのも「アリ」!?

 子どもたちも独立し、夫婦で話し合い元気なうちに自宅を処分し、老人ホームを探そうと決めました。ふたりで決めた条件は3つ。孫たちにいつでも会える距離にあること。部屋から海が見えること。そして、好みの味付けの食事が出ることでした。3ヵ月ほどの間に5ヵ所の有料老人ホームを見学し、3ヵ所に体験入居をして、入浴の様子や夜間体制などを確認しながら検討した結果、現在のホームに決めました。

 決め手はなんといっても食事でした。地産地消のこだわりの新鮮な食材を使い、野菜や果物はサラダバーなどで好きなだけ食べられるように工夫がされています。また定期的に「食事委員会」が開かれ、入居者の希望を聞いてできるだけ取り入れてくれます。しかもホームの裏に農園があり、希望者には畑の一部を安い値段で貸してくれます。初めての経験ですが、今は野菜作りが夫婦の一番の趣味になっています。

(夫婦 夫75歳 妻70歳)

プロの一言

 最近は食事の味や品質に重点を置く施設が増えています。食事は毎日のことなので施設を選ぶときの大切な要素です。とはいってもおいしいと感じる好みは人それぞれ。実際に食べて確認しましょう。
 また最近はほとんどの施設で、食事の提供は外部の事業者に委託をしていますが、しっかりした事業者であれば、自前の提供でなくても、そのこと自体は問題ないでしょう。

その5

入居費が「高い!」「安い!」には理由が…

 65歳で独身です。入居時自立条件の介護付き有料老人ホームに入って2年。始めは共同生活が不安でしたが、自分の生活のペースを変えずにすみ、快適に暮らしています。部屋に入るとひとりになれるし、共有スペースに行くと気のあう友人たちと話ができる。この周囲との距離感がとても気に入っています。体調が悪いときなど、誰かに声をかけておけるので安心感から前より元気になった気もします。

 私はプールもジムも映画室もしっかり利用したいので、共用部分が充実している施設を選びました。入居費用は高額でしたが、設備を考えると当然だと思います。フル活用しているので、入居前よりレジャー費はかからなくなりました。
 月額利用料は、これらの共用施設利用料と家賃、管理費が一定額で、その他は利用した分だけ上乗せされるホームを選びました。食事は食べた分だけ支払い、病院へ付き添いを頼むと別料金が発生しますが、明朗会計なので納得しています。

(女性 65歳)

プロの一言

 立地や、設備、共用部分の充実度、介護費用など合算して高額となるのにはそれなりの理由があります。同程度の施設で入居費用を比較する方法として利用されるのが、老人ホームで暮らすためにかかる費用の「入居一時金」と「月額費用」の入居後5年間の費用合計額で比較する方法です。
 一時金の償却年月数の違いなどで、一概には比べられませんが、一つの目安になるでしょう。
 また、入居の前に、施設利用料、イベント参加費用などが含まれているかいないかも見てみましょう。月額費用には何が含まれているのか、それを明確に把握しておくことも必要です。

その6

有料老人ホームの入居にも「クーリングオフ」がある?

 81歳になる父は数年前から介護が必要な状態でしたが、母がほとんどひとりで介護をしていました。ところが、その母が腰骨を骨折し入院してしまいました。医師の判断では、退院しても車いす生活になるとのことです。
 残された父の世話をするものがいなくなり、急きょ有料老人ホームを探すことになりました。しかし、父の症状や入居費用など、条件に合う施設がなかなか見つからず、6ヵ所ほどあたってやっと自宅から車で3時間ほど離れた施設に入居させることができました。
 当初は、休日を利用して孫たちも連れて会いに行っていましたが、母の病院にも通わねばならず、なかなか会いに行くこともままならなくなりました。

 そうこうするうち、入居2ヵ月ごろから、父は、「食事も合わないし、みんなにも会えないので寂しい。家に帰りたい」と言いはじめるようになり、毎日のように電話がかかってくるようになりました。
 そこで、母とも話し合い、あらためて別の施設を探すことになりました。今は、私が会社の介護休業制度を利用し、自宅で父の介護を行ないながら、施設見学などにも出かけ、時間をかけて本人が納得する施設を一緒に探している状況です。

(男性 50歳)

プロの一言

 有料老人ホームの入居契約にも「クーリングオフ」(短期解約特例制度)という制度が適用される場合があります。これは、一定の期間内(入居日の翌日から起算して3ヵ月)に入居契約の解除を申し出た場合に、前払金が一定額返還される制度です。したがって、この期間内であれば、ほかの施設を探し、一定額の払戻しを受けて他の施設に移ることもできます。
 また、上記期間経過後であっても、どうしても施設に合わず我慢ができないのなら、契約を打ちきるという方法もあります。
 ただし、この場合、施設によっては、入居一時金が全額戻らず、居室のクリーニング代の別途請求、日割り償却などの契約条件になっている場合があります。入居時に契約書及び重要事項説明書等をよく確認し、「クーリングオフ」期間経過後の解約時の条件も確認しておくことが重要です。

その7

十分チェック!「重要事項説明書」

 妻が亡くなり、都心に近い有料老人ホームに入居しました。
 ところが入居して間もなく運営会社が変わることになってしまいました。そして入居者に納得できる説明がないまま新しい運営会社に事業が引き継がれてしまい、その際に入居一時金の保全措置などはされていましたが、食事業者の入れ替えなどがあり、それまでと環境が変わってしまいました。

 そこで入居者同士で話し合い、新たな運営会社と交渉をしてみましたが、サービス自体の低下はないとの一点張りで交渉は進展しませんでした。
 毎月あったさまざまなイベントやレクリエーションも、サークルやクラブ活動重視になってしまいました。また食事の業者が変わった影響は大きく、味が合わなくなり楽しみも半減してしまいました。そこで私は、ホームを出ることにしました。

 しかし、退去する段になると、入居一時金として支払った750万円は、自らの退去を理由に結局420万円しか戻してもらえませんでした。重要事項説明書には運営会社の変更などという記載はありません。返還金については確かに入居時の説明どおりでした。
 それにしてもまさか自分がたった1年で退去するとも思っておりませんでしたから、数字の計算まではしていませんでした。それにしても償却費があまりにも高額なのには理不尽なものを感じてしまいました。愚痴を言っても仕方ありませんが、現在は、あらためて新しい入居先を探しているところです。

(男性 77歳)

プロの一言

 有料老人ホームを選ぶときは、見学や体験入所により確かめることができる設備やサービスの内容だけでなく、運営会社の経営方針・施設運営方針・研修制度・運営懇談会・財務状況なども十分に注意して検討する必要があります。
 もっとも、財務状況を財務諸表等から確認することは難しいので、財務諸表等の読み方に明るい周囲の人に相談すると良いでしょう。また、入居率や介護スタッフの数を確認するのも有効な手段の一つといえますし、有料老人ホームに万が一のことがあった場合の対策(保険への加入の有無、提携施設の有無等)についても最初に確認しておくことが重要です。

その8

「アクティブな人」は何を基準に選ぶ!?

 早くに妻に先立たれ、子どもたちが独立した後、趣味の写真の撮影旅行に出かけたり、友人とゴルフに行ったりと毎日を楽しんでいました。しかし3年前軽い脳梗塞で病院に入院し、左半身に軽い麻痺が残ってしまいました。介護保険を申請して要介護2と判定されました。
 一応退院とはなりましたが、あまり子どもたちには迷惑をかけたくないとも思い、老人ホームに入ることにしました。ホーム選びはなるべく人に手間をかけないように、自らインターネットなどで情報を収集し希望する施設を絞り込み、最終的に2ヵ所の施設に見学に出かけました。
 私がこだわったのは「元気なお年寄りが多い施設」ということでした。

 幸い入居を決めたホームには、囲碁や将棋、麻雀、カラオケ、短歌など多くのサークルやクラブ活動があり、入居者も楽しそうに活動しています。また、演芸大会や、花火大会、暑い盛りにはビアガーデンまで出るなどさまざまなイベントもあります。

 入居してからは、リハビリも兼ねて、参加可能なイベントにはなるべく積極的に参加するようにしています。思いがけず、趣味の写真撮影も皆さんの役に立ったりして喜ばれています。
 将来、寝たきりや認知症になったとしても、継続してそこに住んでいられるということなので、今は安心して暮らしています。

(男性 72歳)

プロの一言

 施設の選択は、生き方の選択にもつながります。費用面の条件などから自分の希望を全部満たすことは難しいかもしれませんが、譲れない希望を3点くらいに絞って施設探しをするといいでしょう。

その9

「人間関係」はどこでも難しい…

 夫が残してくれた一軒家に長年ひとりで暮らしていましたが、自宅を売却し有料老人ホームに入る決心をしました。
 そこで担当のケアマネジャーに相談したところ、立地条件や費用など私の条件に合うホームを探してくれたのです。
 人付き合いが苦手な私は入居後の人間関係がとても心配でした。そのことをスタッフの方に話すと、「どこにいても人間関係が大変なのは同じです。何かあったら、一緒に解決しましょう」との言葉をいただきました。その一言にとても気持ちが楽になり、雰囲気も申し分のないこのホームに入ることにしました。

 定員数50名程度のホームですが、思っていたように、穏やかな人もいますし、いつもイライラしているような人もいます。
 でも、人間関係で困ったときはスタッフに相談すると、じっくり話を聞いて、解決策を考えてくれます。今では何でも話せる友人もでき、毎日ゆったりと過ごしています。

(女性 80歳)

プロの一言

 どんな場所でも人の集まるところには多かれ少なかれ人間関係の心配事があると思っておいた方がよいでしょう。入居前からあれこれ心配するよりも、問題が起きたとき施設としてどのように対処するのか、その姿勢をスタッフに確認しておくことが大切です。

その10

無理せず、時間をかけて、ゆっくりと…

 高齢になり、一人では外出もままならなくなりました。相談するにもそばに人もいなく、また話し相手も欲しくなり、有料老人ホームへ入ることにしました。今のホームは応対がとても親切で丁寧なこと、また施設もきれいで清潔感にあふれていました。それに手芸や絵手紙、書道、園芸などのレクリエーションも充実していました。それでこの施設に入居を決めたのです。
 施設内はすでに人間関係ができあがり、いくつかのグループもできていました。どの人もとっつきにくく感じて、友人ができないのでは、と内心焦りました。

 しかし、ずっと暮らす施設なので、長い時間をかけてゆっくり皆さんと打ち解けていけばいい、と決めると気持ちが楽になりました。
 Aさんは、テレビで旅番組を見ていたときに、同郷でしかも隣町であることがわかり、すっかりうちとけ、お国言葉で話す仲になりました。
 声が大きく苦手だったBさんは、どういう訳か食事のたびに毎回近くに座り、しかたなく挨拶しているうちに、同じように歌舞伎が大好きということがわかり今は誰より親しくしています。

 また、レクリエーションのスタッフに厳しい人がいるのですが、実は専門性が高く、私の身体を真剣に考えて関わってくれていたこともわかりました。
 今はこのホームがとても居心地の良い場所になっています。

(女性 82歳)

プロの一言

 どんな施設でも、周囲の状況を把握するには、それなりの時間がかかります。
 それは一般のご近所付き合いと同じです。スタッフの方と相談しながら、焦らず、無理せず施設の生活になじんでいくことが大切です。

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