MY介護の広場トップ >  介護従事者・事業者のみなさま >  高齢者レクリエーション >  お年寄りのためのセラピー入門 >  第3回 土に触れ、植物を育てる喜び「園芸セラピー」【4.高齢者施設での効果の実例】

4.高齢者施設での効果の実例

問題行動の軽減

 重度の認知症状態の男性(70代)は、土を食べたりする異食行動や、昼夜が逆転する生活、徘徊が問題行動として見られました。園芸療法の目標として、土の区別がつき、異食がなくなる(短期)、介助により植物が植えられる(長期)を設定しました。

 最初は土を蒔いたりしましたが、指導によって鉢に土を入れられるようになりました。フラワーアレンジメントを作ったときは、奥さんを思い出し「うちのにやるから、買って帰る」と言い、奥さんにプレゼントをしました。
 植えることはできませんでしたが、水を与えたり、草むしりもできるようになり、異食がなくなりました。

自発的な作業を呼び起こす

 認知症の女性(90代)は、日中はデイルームでニコニコして座っていることが多い方でした。レクリエーションに誘っても断られることが多かったのですが、家族の方から花が好きだということを教えられ、園芸活動への参加を勧めました。
 初めの1ヵ月は遠くから眺めているだけでしたが、参加するように声をかけて誘導し、2ヵ月半を過ぎたあたりから徐々に興味を示し始めました。

 ある日、イチゴの苗を見て「大きな実がついていますね」と発言。グループ作業には参加しなかったので、3ヵ月目から一人で園芸作業を行なうように誘導したところ、花の観察をしたり、自発的に水やりをするようになりました。園芸を行なうようになってから認知症が改善していました。

コミュニケーションの改善

 右大腿部切断、体幹機能障害、認知症の女性(70代)は、車いすにぼんやり座っているだけで、表情に乏しく、毎朝の体操やレクリエーションなどにも自発的には参加しませんでした。

 そこで、2ヵ月間の期間で週1回1時間の園芸療法を実施しました。園芸療法開始当初は会話も少なく、10分程度で座っていることに対する気分の不快を訴えていました。作業にもほとんど手を出さず、他の参加者の作業を見るだけでした。

 しかし、回を重ねるごとに、他の方と挨拶などのコミュニケーションがとれるようになってきて、園芸作業にも参加するようになりました。
 もともと園芸経験があったということで、作業内容の理解は早く、興味をもつことで意識が作業に集中し、園芸療法6回目には座っている時間が1時間に延びました。多少の不快よりも、園芸に対する楽しさが優先するようになったからだと思われます。

役割を果たす喜び

 脳梗塞発症、軽度の右片麻痺の男性(80代)は、テラスの水やりに興味を示したので、担当を依頼しました。水やりを忘れないために○×のチェック表を作成しました。
 プランターの数が増えたときに、作業療法士が配置を変えようとしたら、「そこは動かさなくてもいいんだ」と、確たる考えがあることを示しました。「水やりのおじさん」と呼ばれるようになり、責任をもって役割を果たすことに喜びを感じているように見えます。

 このように、園芸作業を通じて、問題行動の解消、生活の質の向上、リハビリ効果、意識の向上などが見られることが、報告されています。


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