ポータブルトイレの選び方
排泄は人間にとってもっともプライベートな行為です。その排泄を他人にゆだねることは、高齢者にとっても自尊心を傷つけられることです。
たとえトイレまで歩けない高齢者でも部屋にポータブルトイレがあれば自分で排泄できるということもあります。座ることができるなら、おむつは最後の手段として、高齢者の自立した生活のために、ポータブルトイレの導入を考えてはいかがでしょうか。
1.ポータブルトイレ使用に
適するのは
部屋にあれば便利なポータブルトイレですが、高齢者がひとりで使いこなすにはある程度の身体能力が必要です。
座位がとれるのが基本ですが、ポータブルトイレ導入前に、本人がひとりで下着を着脱できるのか、立ち上がりなどの移乗能力、姿勢保持能力などを確認します。またひとりではできなくても介助があればできるかどうか確認しましょう。
2.ポータブルトイレの種類
標準型(プラスチック製)

【利点】
- 安価
- 小型で場所をとらない
- 軽量で移動が楽
- 掃除しやすい
【欠点】
- 軽量のため不安定
木製いす型

【利点】
- 重量があり安定
- 家具調で居室にマッチ
- 高さ調節可能な製品もある
- 普通のいすとしても使用可能な製品もある
【欠点】
- 比較的高価
- 設置スペースが必要
- 移動させにくい(最近はキャスター付もある)
- キズが付き、そこに汚れが付くと臭いがとれない
コモード型(金属製)

【利点】
- 安定
- 移動が容易
- 座面の高さ調節可能
- 立ち座りがしやすい
- 横移乗のために左右のアームが可動
- 掃除しやすい
【欠点】
- 外観が居室にあわない
ベッドサイド設置型(スチール製)

【利点】
- ベッドから移乗できる
- 立ち上がりや移乗用の手すりが付いている
- 高さ調節可能
- 移動用にキャスター付の製品もある
- 掃除しやすい
【欠点】
- 外観が居室にあわない
【使用上の注意】
- 設置するとき、ベッドと座面の高さを揃える。アームの短いほうをベッド側にする
3.ポータブルトイレの選び方の
ポイント
ポータブルトイレは、さまざまなタイプの製品が、数多く販売されています。お年寄りが安全に、気持ちよく使用できるよう、その人の状態や体格にあったものを選ぶことが大切です。
置き場所
ポータブルトイレを置くにはスペースが必要です。
まず、どこに置くかを決めて、置く場所にあった大きさのものを選びましょう。介助者が必要な場合は介助者が動けるスペースも必要です。
安定感
腰かけたときに安定していること。
また、肘かけがある場合は、腰かけるときに体重をかけても倒れないものを選びます。
高さ
立ち座りをスムーズに行なうには、ひざの関節が直角に曲がり、足底がきちんと床に付いていなければなりません。高さ調整ができて、身体にフィットするものを選びましょう。
ベッドの近くに置く場合は、移動が楽なように同じくらいの高さのものを選びましょう。
ひじ掛けが外せる(跳ね上げられる)ものを
ベッドからの乗り移りの場合、ひじ掛けを取り外し、または跳ね上げができると、横にスライドして移ることができるので、たいへん便利です。
蹴込みスペースがあること
蹴込みスペースとは、立ち座りの際に、足を便器側に引くことのできるスペースのことです。
人が立ち上がり動作を行なうとき、足を引くことで自然な姿勢が保て、身体への負担も軽くなります。
蹴込みスペースがない製品の場合、重心の移動が困難となり前傾姿勢をとることが難しく、立ち上がる前に倒れる場合があります。
便座の大きさ
便座の大きさは、その人の体格にあわせて選びます。やせ型やお尻の小さい人には、小さめの便座を選びます。
移りやすさ
ベッドや車いすから移りやすいものを選びましょう。
アロン化成の安寿シリーズ「家具調トイレセレクトはねあげL」をはじめ、便座の高さやひじ掛けの高さが調節でき、どんな体格の方にもあうポータブルトイレが開発されています。
※「安寿」は、アロン化成株式会社の登録商標です。
跳ね上げひじ掛けで移乗が楽にできる
「家具調トイレセレクト はねあげL」
(アロン化成)

便座の角度調節

角度を調節した場合、立位での移乗に適します。
背もたれ位置の調節

体格や円背などの身体の状態にあわせて背もたれ位置を前後2段階に調節できます(調節幅2cm)。
キャスター

脚にキャスターがついているので、移動させる場合に便利です。
後方介助スペース

座面は後方に倒すことができるので、後ろからの介助に便利です。片手でも操作ができるので、介助者の身体をもう片方の手で支えることができます。
折れ座面

持ち手の位置と、座面の軽量化で握力の弱い方でも手首を返さずにラクに開閉できます。開閉時の音が気にならない減音設計もあります。
4.機能で選ぶには
ポータブルトイレはさまざまな機能が付いた製品が開発されています。
利用者の身体状況、ニーズに応じた製品を選びましょう。
暖房便座
冬場や夜間の冷たい便座は瞬間的に体温を奪い、動悸が早くなったり、血圧が上がるなどの危険性もあります。暖房便座は30℃~40℃の範囲で温度調節が可能で、排泄に時間がかかる高齢者にも安心な機能です。
ソフト便座
樹脂性の便座で、座り心地がよく、お尻のやせた方が長時間座っていても苦になりません。
シャワー機能
お尻を水で洗い流す機能です。紙で拭くより、お尻の痛みがありません。
また紙で拭くより清潔に保てるので、かぶれなどの発生を軽減する効果もあり、介助者の負担軽減にもつながります。
脱臭機能
排泄の臭いを消す機能です。排泄介助でいちばん気になるのは臭いですが、脱臭機能が排泄時の臭いを強力脱臭するので、介助者の負担軽減だけでなく、利用者の精神的な負担の軽減にもつながります。
5.設置するときの配慮
足腰の弱い高齢者にとって、ベッドからポータブルトイレに移乗するための体重移動、衣類の着脱などはたいへんな労力を要します。覚醒しきっていない深夜や早朝に使用される場合は、特に体勢維持が不安定になり、転倒する危険があります。部屋が暗いと、より危険性が増しますので部屋の明るさにも配慮しましょう。
足が滑らないように滑り止めマットが必要な場合もあります。支えを必要とする方には、手すりか、体重をかけられるテーブルなどを置くようにしましょう。
また、ポータブルトイレを利用する人の気持ちを考え、つい立やカーテンなどで目隠しをする配慮もしたいものです。
取材協力:アロン化成株式会社