6.家族への対応、地域社会との連携(1/3)
ポイント1
家族対応も認知症ケアの重要な課題
認知症ケアでは、家族への対応も大きな課題となります。在宅での介護が中心となっている場合、家族が介護疲れから本人につい手を上げてしまう、あるいは介護放棄(ネグレクト)におちいるといった虐待リスクがまず頭に浮かびます。
しかし、明確な虐待でなくても、ストレスなどから本人に接する態度が少々きつくなるといった状況もリスクとして念頭に置きたいものです。
認知症の人は、「目の前にいる人が家族であるかどうか」という認識が衰えた場合、「この人は本当に自分を守ってくれる人なのかどうか」を見極めるべく警戒心を強めています。そのときに少しでもきつい態度を見せれば、「自分は安心・安全な環境に置かれていないのではないか」と受けとり、混乱を深めたり、いきなり表に出て行ってしまうなどのケースも起こりえます。
その点では、家族に対する十分な支援も、本人のリスクマネジメントにつながると考えるべきでしょう。
認知症の人を抱える家族の場合、普段はなかなか口に出せない「つらい思い」を心の奥に抱えていたりします。そうした思いにしっかり耳を傾けることも事業所の大切な役割の一つです。
一事業所としてできることは、例えば家族会などの場で、家族同士が「介護体験などを語り合う」機会を設けるといった方法があります。そのような場合、他者の体験を聞く中で「皆、自分と同じつらさを体験しているのだ」ということに気づかされます。
そのような他者の体験談は、「自分の心の状態」を客観視することにもつながります。自分を客観視できれば、ややもすれば落ち込みそうな感情、いわばマイナス感情をクールダウンさせる力となり、本人への接し方も改善される効果があります。
認知症の人の家族同士の
交流がもたらす内的効果