介護現場の防犯・防災にかかるリスクマネジメント
第4回 「介護現場における『防犯』をどのように進めるか?」
◇ポイント1 介護現場での犯罪発生確率は意外に高い
介護現場が何らかの「犯罪」に巻き込まれるケースは、決して特異というわけではありません。まず、ひとりの人が犯罪被害の対象となる(何らかの理由で狙われる)平均的な確率をAとします。そして、被害者に近い距離にある人が、その犯罪に巻き込まれる可能性を考慮すれば、不特定の人が集合する場(介護現場など)は「A×人数分」で犯罪被害に遭う確率は高まっていくことになります。
加えて、人の集積時間が「地域の人目にふれにくい深夜帯」にもおよぶとなれば、先の「A×人数分」に時間帯の偏差が加わることになります。さらに、一定の資産や情報など窃盗や強盗の標的になりやすい要素が集積している点を加えれば、これらの要件が揃っている介護現場の犯罪被害確率は、一般的なイメージ以上に高いと言わざるをえません。
もちろん、同様の条件が重なるのは、介護現場に限りません。病院や官庁、企業でも同様のリスクはあります。問題なのは、リスクを想定したセキュリティという点で、介護現場はやや遅れが目立つ点です。介護現場の場合、地域との共生や入居等をしている利用者と家族・親族・友人との交流を「自立支援」に向けた重要な理念としています。それゆえに、「セキュリティのレベルを上げると、外部との共生・交流等を妨げるのではないか」という躊躇(ちゅうちょ)がどうしても生じやすくなるわけです。
しかし、セキュリティのレベルと地域との共生・交流等は決して相反するものではありません。両者の両立には、さまざまなルールやシステムが必要となりますが、これを構築するノウハウこそ、これからの介護現場の専門性が問われる部分と言えるでしょう。