介護現場の防犯・防災にかかるリスクマネジメント
第6回 一刻も早く「日常」を取り戻すために
◇ポイント1 まず大切なのは、被害状況の正確な把握
介護現場が災害や犯罪に巻き込まれた場合、その被害の大きさや範囲の広さゆえに、現場は大きな混乱をきたします。そのため、事態が鎮静化しても、「以前の日常」を取り戻すまでには相当な時間を要しがちです。しかし、混乱状態が続いたまま「復旧」が延びていけば、利用者や職員さらには地域社会に与えるダメージは相乗効果で高まっていきます。
もちろん、設備面の復旧自体が難しいケースもあるでしょう。その場合でも、利用者への十分なケアとともに、他施設・事業所へと円滑に移るための支援ができれば「以前の日常」を取り戻すことは可能です。
しかし、現場の混乱によって利用者のケアにあたれる人材が限られたり、受け皿となる他施設・事業所探しが難航すれば、ダメージは継続することになります。この状況が続けば、やがて地域社会による批判の矛先は施設・事業者に向き、再スタートをさらに阻む要因となりかねません。
迅速な復旧に向けた第一歩は、「被害状況の正確な把握」です。現場は混乱しているわけですから、状況を整理して「どの部分を優先し、どれだけの人的・物的資源を投入するか」という「選択と集中」が重要になります。そこで、いざ災害・犯罪等が生じた場合の「被害状況のチェックシート」などを事前に作っておき、混乱状況にあっても被害状況を客観的に把握できるしくみを整えておきます。
項目を大きく分けると、「設備」「人」「情報」の3つ。これを細分化すると、「設備」であれば、「建物」「家財」「その他の環境」という具合になります。「人」であれば、「利用者」と「従事者」に分けられ、さらにそれぞれ「身体面」「メンタル面」「生活面(例.震災などで転居が必要など)」に分類されます。それ以外の具体的な項目は図を参照してください。