重度の介護サービス利用者が増える中でのリスクマネジメント
第1回 介護現場で高まる療養等のニーズ。その背景とリスク
◇ポイント3 従来のリスク対応では追いつかないことは何か
利用者が重度化しても、リスクマネジメントの基本は変わりません。つまり、事前のアセスメントに基づいて現場での対応法を浸透させつつ、「異変」に対する感度を高めリアルタイムで情報共有と速やかな対処を図ること。そして、「異変」の再発防止に向けた振り返りを実施しつつPDCAサイクル(*注)を機能させることです。これらは、介護事故防止に向き合う現場ならば、常識的な対応といえます。
問題は、一連の流れにおける「それぞれの手順の精度」を高めることです。これが、重度者が増えていく中で、従来の方策とは異なる点です。
なぜなら、ちょっとした異変から重大な結果が生じるという「因果関係の増幅度」が桁違いに大きくなるからです。対象が軽度者である場合、異変をつい見逃しても、その後のフォローがうまく機能すれば、重大な結果を何とか回避できるというケースもあったでしょう。しかし、利用者が重度化していく中では、その余裕がなくなっていきます。
その点を考えたとき、それまでの事故防止・対処のフローがきちんと機能しているか、どこかに「穴」はないかという検証が必要になります。これは、重度者が徐々に増えていくという「現場環境の変化」が顕在化する前に、手がけなければなりません。
環境変化の影響は深く静かに進行するものであり、「まだ大丈夫」と侮っていると間に合わなくなることがあります。ここに、現場管理者の高度なセンスが問われます。
以上の点を頭に入れつつ、次回から重度者対応に際しての具体的なリスクマネジメントを掘り下げていきましょう。まずは、事前のアセスメントなどの基本についてふれます。
*注 PDCAサイクルとは
事業における管理業務を円滑に進める手法の一つ。計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act)のプロセスを繰り返すことで、業務を継続的に改善すること。