重度の介護サービス利用者が増える中でのリスクマネジメント
第6回「看取りニーズ」急増時代の現場対応
◇ポイント1 スタッフの疲弊が大きな課題となる
国の推計によれば、人口の高齢化にともない、死亡者数は2030年までに今より約30万人増加するとされています(内閣府 『平成27年度版高齢者白書』)。この伸びに病床数が追いつかない状況も考えられ、自宅や介護事業所・施設といった病院以外での看取りニーズの急増は確実です。ここに地域包括ケアシステムにおける大きな課題が横たわります。
看取りに際しては、最期まで「その人らしい生活」のあり方が問われます。たとえば、病院以外での看取りとなった場合、訪問診療・看護などに加え、「生活」を整えていくための介護系サービスが大きなポイントになります。2015年度の介護報酬でも「早期からの看取り対応」にかかる加算などが手厚くなり、介護事業所・施設に対して看取り指針や看取りケア計画の策定が要件となっています。
注意すべきは、今日・明日にでも亡くなるかもしれない人に、現場の介護職員がかかわっていく場合、状態把握の集中力や緊張感の持続が、大きな負担となる点です。利用者さんが亡くなった後の喪失感なども問題でしょう。このような介護職員の心や身体のケアも計画的に進めていかないと、人材は疲弊し、力のある人ほど燃え尽きリスクが高まりかねません。
介護事業所・施設を運営する法人は、まず、看取りの現場で「何をしなければならないのか・(医療・看護職に)何を伝えなければならないのか」、「そのミッションを遂行するうえでどんなツールやスキルが必要なのか」、「これらを実践するうえでの組織づくりをどうするのか」という幅広い視点に立ち、組織風土から整えていくことが求められます。