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介護っていつから始まるの?

 「介護、介護ってみんなが言うけど、いったいいつから始まるの?」とよく聞かれます。そこで私は、「自分の老いを意識したときからよ」と答えています。
 人それぞれ人生が違うように、老い方も異なります。つまり、人と比べられないのが老いなのです。

 ところで、このように言う私にも、すでに自分に対する介護が始まっていると思っています。それというのも、気持ちどおりに体が動いてくれなくなったからです。これはまさに自分が、介護の入り口にいることを意味しています。そこで、人からの世話を受ける前に、自分で自分の介護をしてみようと思いました。
 幸か不幸か、私は介護に縁があり、19歳から49歳までの間に、祖父母、父母、姑と身内5人の介護と看取りを経験しました。結果的にそれらの経験は私の老いのリハーサルでもありました。できることなら、生まれた順に旅立つ。それが、人間として幸せなことだと思っています。ようやく死ぬ順番が私にきたということでしょうか。

 とはいっても、しっかり命を燃やさなければ死にたどり着けないということも、過去の介護から学びました。元気で死ぬためには、自分で自分を守らねばならない。それが、自分で自分の介護をするという発想に至ったのです。
 現在、私は、ベッドのそばにポータブルトイレを置いて、夜中の排泄にそれを使っています。寝ぼけ眼でも、体がふらつくときでも、それは安心して使えます。それに、ベッド続きのトイレなので、寒い夜でも体を冷やすことはありません。
 朝起きて、しっかり目が覚めてから、自分で自分の排泄物を処理します。これこそ、自分で自分の介護をするということになるのではないでしょうか。これならトイレに向かう途中によろけて転ぶ心配もありません。安心そのものです。

 私は体と心を分けるという考え方を持論にしています。その考え方とは、老いた体は、自分の心が見守ってあげようというスタンスです。そう思うことで、恥ずかしさは消えます。この先、どこでどんな人の世話になろうとも、どんな場所での排泄行為も抵抗なくできると思っています。
 気持ちどおりに体が動かなくなったら、その現実を当たり前のように受け入れ、対処していくこと、それが肝要です。自分の老いと向き合い、自らサポートしていくことは、発想を広げることでもあります。

 できなくなったことを嘆くより、どうすればいいかを考える。体が思うように動かなくなった分、頭を動かす。認知症予防の鍵は、意外に、自分で自分の介護をすることにあるようにも思えてくるのです。

【執筆者プロフィール】

羽成 幸子/はなり さちこ

1949年生まれ。カウンセラー、エッセイスト。祖父母、父母、姑、身内5人の介護経験をもとに、介護する側、される側の心のあり方をユニークな発想と介護哲学でわかりやすく紹介。「介護することは、自分の老いのリハーサル」と語り、全国各地で講演。ヘルパー養成研修講師、ボランティア研修講師も務める。
『勇気が出る介護の本』他、著書多数。

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