1.回想法とは何か
高齢者の多くが、繰り返し繰り返し同じ話をします。昔のことをあたかも、今、目の前での出来事のように丹念に話します。
これまで、この高齢者の過去への回想は、"過去への繰り言"とか"現実からの逃避"などと否定的にとられがちでした。
しかし、1960年初め、アメリカの老年医学者・ロバート・バトラーは「高齢者の回想は、死が近づいてくることにより自然に起こる心理的過程であり、また、過去の未解決の課題を再度とらえ直すことも導く積極的な役割がある」と提唱しました。
野村豊子氏は「人生は過去の体験や出来事が、縦糸や横糸となって織り成される1枚の織物のようなものである。無数の織り目には、楽しさとやさしさと同時に、つらさや悲しみも込められており、それには1枚として同じものは無い。人は何かをきっかけとして、この1枚の織物に織り込まれている過去の出来事、出会った人々、懐かしい場所や景色、聞き覚えのある声や歌、昔に味わった食べ物などを当時のさまざまな思いとともに回想する。特に高齢者には、それまでの人生を振りかえり、さまざまな過去の記憶や思い出に親しむ傾向が認められる」としています。
高齢者一人ひとりが現在を豊かに生きていくために過去の回想を語るのは自然なことです。回想を通して過去を現在に生かしているのです。高齢者の歴史、体験、こだわり、習慣をより深く理解し、日常の援助に生かしていくことが大切なのです。
現在、回想法は欧米を中心に高齢者にかかわるさまざまな職種の人たちに取り入れられ、豊富な臨床・実践および研究が展開されています。
日本においても回想法の実践は、病院や特別養護老人ホームなどで行なわれてきました。
しかし近年、回想法は「認知症予防」の効果も期待され、病院、施設から地域へと広がりを見せています。
回想法には「個人回想法」と「グループ回想法」があります。
ここでは「グループ回想法」を中心に具体的方法について考えます。
