3.回想法実践の前に
回想法を行なう場合、専門職として守るべき倫理があります。
(1)語り手の尊厳を守る
語り手の回想した内容を、今後の生活の質の向上や介護に生かすために、スタッフが共有したり家族に伝えたりすることがあります。そのため回想法で聞いた内容を「他の人に伝えることに対する合意」を、本人および家族から得ることが必要です。
(2)語られた人の尊厳を守る
回想の中で、例えば「お嫁さんとうまく行かない」など、家族や友人の尊厳に関わる話が出ることがあります。回想法では語り手の話を遮ったり否定したりせずにそのまま受け止めます。それゆえ、語られた人の尊厳を守るために、最大限の配慮が望まれます。
(3)回想法参加者全員が、そこで語られたことを他言しない
グループ回想法の場合は、その場で出た話を口外しないことを原則にします。とくに個人情報がうわさ話のような形で周囲に伝わらないように細心の注意を払います。
(4)語り手の話が、毎回変わっても否定しない
語り手は他の参加者との関係や、気持ちの変化などで、話す内容が変化することがよく見られます。たとえ内容が変わっていても否定せず受け止めることが大切です。
(5)相手が話したくないことは無理に尋ねない
語り手の話す言葉だけでなく、語り手の心の奥にある思いを受け止めることが回想法の大切な要素です。そのためにも相手のその日の状況をよく見極め、話したくないことはむりやり聞き出すことはせず、話したことには深く共感する聞き手になることが望まれます。