4.回想法の具体的方法
1.事前の準備
回想法は相手のプライバシーにかかわるため、実践に際しては事前の準備が大切です。
- 回想法について、実践者は十分な知識が必要なため、導入のときは勉強会などをもちます
- 参加者が触れられたくない話題などを、できる限り事前調査します
(例えば、家族関係が複雑で触れられたくない場合など) - 参加するメンバーの聴力・視力・記憶力、その日の体調・気分などを把握します
- 当日参加するメンバーの選定は、参加者のバランスを見ながら決めます
2.参加者、スタッフ、目標設定
- 参加者の候補、およびスタッフを決めます
(グループ回想法では、参加者が8名の場合、スタッフはリーダーとそれを支えるサブ・リーダーの2名が必要とされます。
それ以外にも2人を支える1~2名のスタッフがいれば、なおいいでしょう) - 参加候補者のアセスメントを行ない、最終参加者を決定します
- グループ全体の目的、参加者個別の目標を決めます
- グループ参加者に個別に声をかけ、同意を得ます。併せて家族にも同意を得るようにします
- 具体的な日時が決まったら、できれば本人と家族に「思い出語りの会へのご招待」等、当日話す内容をわかりやすく説明した招待状を用意してわたすとよいでしょう
3.実施回数、日時、場所、
テーマの決定
参加者、スタッフ、目標設定と並行して、実施回数などを検討します。
①回数・テーマ
1クール何回にするか、例えば8回にした場合8回分のテーマを決めます。
設定テーマはたくさんありますが、例えば次のようなものがあります。
いずれの場合も、初回は皆が気軽に参加できるテーマを選びます。家族の話題などは参加者の気心が知れた頃合いを見はからってからにします。1クールの最後は希望あふれる明るいテーマを選ぶようにしましょう。
例1 時系列によるもの 1クール8回
すぐに役立つ 回想法ツール |
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第1回 | 小さい頃住んでいた家 | なつかしの写真館 |
第2回 | 小さい頃の遊び | なつかしの写真館・なつかしの童謡・ 昔遊び・折り紙・伝統芸術・思い出の大横綱 |
第3回 | 小学校時代のお手伝い | なつかしの写真館・昭和の電化製品 |
第4回 | 学校の思い出 | なつかしの写真館・なつかしの童謡 |
第5回 | 季節の行事で心に残ること | なつかしの写真館 |
第6回 | 最初の仕事 | |
第7回 | 旅行の思い出 | 介護現場で使えるフリーイラスト集 |
第8回 | 今後の楽しみ |
参考
回想を促すテーマ例例2 道具を用いたもの(写真も含む)
1クール8回
すぐに役立つ 回想法ツール |
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第1回 | お手玉・おはじき | 昔遊び・折り紙・伝統芸術 |
第2回 | 洗濯板・たらい | なつかしの写真館・昭和の電化製品 |
第3回 | お雑煮 | なつかしの写真館 |
第4回 | 学校のお弁当 | なつかしの写真館 |
第5回 | 昔使っていた化粧品 | |
第6回 | 好きだった洋服 | なつかしの写真館 |
第7回 | もう一度会いたい人 | 大人の「塗り絵」教室 |
第8回 | これからやりたいこと |
②日時の決定
- 毎週1回、月1回、月2回などに設定します
- できれば同じ曜日、同じ時刻に行なうとよいでしょう
- 時間は1時間程度を基本とします
③場所の決定
- リビングや庭など明るい場所が望ましいでしょう
- 場合によっては地域の郷土館、古民家、武家屋敷など回想に役立つような建物も活用しましょう
4.回想法の活用
①終了後は毎回、セッションを振り返り、
個人記録をつけます
セッションが全体としてうまくいったかだけではなく、一人ひとりの様子を観察することが重要です。
活動の内容・役割、本人の反応や様子・満足度、ほかのメンバーとの関係性などについて記録を作成します。
②アセスメント・ツールの活用
回想法が実際に有効かどうか検討するためにアセスメントは重要な意味をもっています。その場合アセスメント・ツールを用いる方法があります。
たくさんの種類が出ていますので活用してはどうでしょうか。
③その後の生活に活用する
始めに述べたように回想法は、たくさんの効果が期待されます。
実施後の結果を、具体的にケアプランに反映させるなど、ケアの質を向上させるために活用しましょう。