高齢者こそ口腔内の手入れが大切
今回から、具体的な歯の健康について考えていきます。
Q.歯周病と認知症って関係あると聞いたことがあるけど本当なの?
A.その通りです。最近の研究で明らかになってきました。
実は歯科と認知症にはストーリーがあります。歯を失うと噛み合わせが悪くなりやすくなります。噛み合わせが悪い方ほど、転倒や寝たきりのリスクが高いこともわかっています。高齢者の転倒は非常に危険で、そのまま寝たきりになってしまう例も少なくありません。
一度転ぶとまた転んでしまうのではないかという不安によって動くことが怖くなってしまい、運動不足につながり、心身ともに衰弱し寝たきりになってしまうこともあります。そして、人と会話する機会が減り、認知機能が低下してしまうことがよくあります。
また、認知症が進行すると
歯周病の治療や予防によって、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性があります。
他にも難聴から認知機能の低下が起こり、認知症を発症するケースも増えています。実は難聴と舌の筋肉は関連しています。舌の筋肉を鍛えるという意味で日頃から、「あいうべ体操」を始めてみましょう。
歯科の分野で我々にできることは、認知症の発症、進行を遅らせるべく、
①定期的な歯周病ケアを受けてもらう事
②発音や嚥下機能を保ってもらうために「あいうべ体操」を促す事だと思われます。
Q.「あいうべ体操」とはどのようなものでしょうか?
A.お口や舌の筋トレの方法として、有効なのが「あいうべ体操」です。
「あ」口を大きく開ける(縦の楕円形に近くなるようにしてから喉の奥が見えるくらいが目安です)
「い」口を横にあける(頬の筋肉が両方の耳の横による感じがするぐらいが目安です)
「う」口をとがらせる(思い切り唇を前に突き出すイメージです)
「べ」べーと舌を延ばす(舌の先を下あごの先端まで伸ばすイメージです)
行なう際は、声を出してもいいですし、周りが気になるなら声を出さずに口を動かすだけでも大丈夫です。これらを1セットとして、毎食後に10回行なうとよいでしょう。ただし、「あいうべ体操」は筋トレなので、急にフルセットやるのはおすすめできません。
まずは少しの回数から徐々に増やしていきましょう。また、大きく口を開けるので、顎関節症の方や口を動かすときに痛みが出るような場合は、無理しないようにしてください。
他にも気になることがございましたら拙著「人生100年時代 歯を長持ちさせる鉄則」にて、お口のステージごとに解説しております。
ぜひ一度ご覧ください。
【執筆者プロフィール】
魚田 真弘/うおた まさひろ
エンパシーデンタルクリニック院長。
歯一本単位でなく顔面や全身との調和を目指す「全体治療」、口と全身の関係に配慮した「医科歯科連携」、原因を追究する「根本治療」に注力。
著書に「人生100年時代 歯を長持ちさせる鉄則」。