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高齢者にとって、特に入浴が大切なワケ...すぐに感じる効果

一般公開日:2022.9.18

 私は入浴に関して医学的に20年以上研究している研究者ですが、医師として訪問診療など高齢者医療にも長らく従事してきました。
 そのなかで時々家族から伺うのは「お風呂(浴槽入浴)を嫌がるようになった」とか、高齢者本人からも「お風呂に入るのが面倒」という話です。

 確かに、体が不自由になってくると自宅でお風呂に入るのも一苦労です。食事や着替えが自分でできる人も浴槽に入れないという人が多いです。
 浴槽の縁をまたぐという動作は足を高く上げる必要もありバランスも崩しやすく、意外と大変な動作だからです。また一人暮らしの場合、浴槽の清掃が大変、という話も聞きます。シャワーを浴びれば体の汚れは落ちるので十分だ、という方もいます。

 介護する家族側としても、体の大きな大人を介助して入浴させてあげるのはかなりの重労働です。水で滑りますし暑い浴室での作業は大変です。

 しかし、高齢者こそ、お風呂に入ってもらいたいのです。その理由は、最近になって特にお風呂の健康効果が明らかになってきたからです。その一つは入浴による短期的な心身への影響です。私たちは経験的に、入浴することで疲れが取れることや、良く眠れること、気持ちが良いことなどを感じてきました。

 実際に医学的研究でも、浴槽に浸かることで疲労が軽減し、良い睡眠が取れるということが報告されてきています。また入浴でリラックスの脳波が観察されるとか、ストレスホルモンが減るということなども明らかになっています。

 このような入浴の効果の多くは、お風呂が持つ「温熱作用」によるものと考えられています。お風呂に入るとシャワーとは異なり、体が温まって体温が上がってきます。
 40℃以下の比較的ぬるいお湯に入ると体温が程よく上がり、血管が広がって血液の巡りが良くなります。血流で全身の疲労物質が取り除かれ、栄養分が届けられます。このことで効率良く疲労が取れるのです。

 程よく体温が上がることが副交感神経を刺激して、良い睡眠にもつながりリラックスをもたらします。これらはシャワーでは得られない効果なので、ぜひお風呂に入っていただきたいと考えています。

【執筆者プロフィール】

早坂 信哉/はやさか しんや

東京都市大学人間科学部教授。
お風呂・温泉と健康の関係を医学的に研究している医師。
一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。
医学博士。温泉療法専門医。「最高の入浴法」他著書多数。

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