MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  高齢者にとって入浴が大切・高齢者にとって、特に入浴が大切なワケ...後からじっくり感じる効果

高齢者にとって、特に入浴が大切なワケ...後からじっくり感じる効果

一般公開日:2022.9.18

 前回、すぐに感じられるお風呂の効果として、リラックス効果や睡眠、疲労回復への効果をお伝えしました。これらはお風呂(浴槽入浴)の持つ、主に「温熱作用」という体を温める作用による短期的な効果と考えられ、比較的昔から研究されてきました。

 一方、最近はお風呂を生活習慣として繰り返すことで得られる長期的な効果も明らかにされてきました。
 筆者と千葉大学の研究チームは、1万4千人の高齢者を3年間追跡調査し浴槽への入浴習慣が介護予防にどのような影響があるかを解析したところ、浴槽入浴が週に2回以下の人と比べ、週7回以上入浴している人は新たに要介護状態に陥るリスクが約3割も減ることが分かりました。

 また、他の研究チームは40~59歳の3万人を20年間追跡した調査で週2回以下の人と比べて週5~7回浴槽入浴している人は、虚血性心疾患や脳卒中が起こるリスクが約3割前後減少することを報告しています。

 少し前までは、単にいかに長く生きることができるか、つまりいわゆる平均寿命(高齢者にとっては正しくは平均余命)が延びることが人々の関心事でしたが、最近は単に寿命が長いというだけではなく、元気で生活が自立できた状態で長生きできることが重要と考えられてきています。

 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことを健康寿命と言いますが、上述のような生活習慣としての入浴に関しての研究結果が発表されてきたことにより、言い換えれば、「毎日の入浴が健康寿命を延ばす」とも言えそうです。

 また、筆者が以前静岡県で行なった調査では、毎日浴槽入浴をしている人は、そうではない人と比べて幸福度が高い人が多いという研究結果を示しました。他の対象者でも同様の調査を行ないましたが、結果は同じような傾向でした。
 どうやら毎日入浴することと幸福度が高いことは関連があるようです。

 高齢者の入浴介護をすることは大変なことですが、1回1回の入浴が健康寿命を延ばすことや、幸福度が上がることにつながると思うと、とても大切な介護であることが分かります。
 介護を提供するご家族や事業者の皆さんも自信をもって入浴介護にあたっていただけますと研究者としても嬉しい限りです。

【執筆者プロフィール】

早坂 信哉/はやさか しんや

東京都市大学人間科学部教授。
お風呂・温泉と健康の関係を医学的に研究している医師。
一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。
医学博士。温泉療法専門医。「最高の入浴法」他著書多数。

MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  高齢者にとって入浴が大切・高齢者にとって、特に入浴が大切なワケ...後からじっくり感じる効果