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健康を維持する入浴のコツ-入浴に伴う体調不良や事故

一般公開日:2022.9.18

 入浴は疲れを取る、よく眠れるようになる、介護予防につながるなどさまざまな健康効果があることは前回までにお伝えしたとおりです。なるべく入浴してもらいたいのですが、一方で入浴に伴う体調不良や事故(以下、事故等)も報告されています。

 入浴に関する事故等に関して実態が分からないと、入浴サービスを提供する側は「何となく怖いものだ」とか、「事故が心配だから入浴を避ける」と考えるかもしれません。まずは入浴事故等の実態を客観的に知ることが大切と考え、私は調査を行なってきました。

 以前、何らかの入浴サービスを提供しており入浴に関連する事故等を経験した102箇所の社会福祉協議会へ調査をしました。事故等の発生率は入浴1万回あたり訪問入浴で0.204回、施設内入浴で0.067回でした。
 つまり、訪問入浴では10万回入浴サービスを提供することで2、3回の頻度で事故等が発生するということです。この時の調査では記憶に残るような事故等を尋ねていますので、細かなものを含めるともう少し多いかもしれません。

 さらに、訪問入浴事業所として登録がある2,330箇所の全事業所に対して詳細な調査を行ない、入浴事故等の例596件を解析しました。
 事故等の状況は、多い順に発熱(16.8%)、呼吸困難・喀痰喀出困難(15.6%)、意識障害(10.7%)、嘔吐・嘔気(10.6%)、外傷(移動時の皮膚剥離・擦過傷など)(10.6%)、血圧上昇(7.7%)、血圧低下(7.7%)、チアノーゼ・顔色不良(6.0%)でした。

 これらの事故等は入浴中だけでなく入浴後に利用者の訴えなく起こることもあり、スタッフが利用者宅から離れてしまった後は、入浴を終えた利用者の様子にこれらの症状がないか、1時間程度はこまめに観察するように家族へ伝えておくことも大切です。

 こういった基礎的情報を知っておくと事故発生の予測ができます。

【執筆者プロフィール】

早坂 信哉/はやさか しんや

東京都市大学人間科学部教授。
お風呂・温泉と健康の関係を医学的に研究している医師。
一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。
医学博士。温泉療法専門医。「最高の入浴法」他著書多数。

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