新田社労士監修・両立マニュアル介護離職の現状
介護離職者数は?
2016年9月までの10年間に家族の介護や看護を理由に離職や転職をした人は92万4千人。うち71万5千人が女性でした。毎年約10万人が介護や看護のために離転職し、しかもその8割弱が女性なのです。
看護・介護を理由に離職・転職した人数
※横軸の年は各年10月から翌年9月までの期間を表示
出典:総務省「就業構造基本調査」
(平成29年度)
介護等離職後の再就職の状況
介護等による離職した人のうち、離職後1年間で転職できなかった「無業者数」は、毎年増加傾向にあり、直近の2016年では、介護離職者9万9千人のうち、7万4千人が再就職できていません。
特に、高齢者(65歳以上)を除く無業率をみると、コアな介護世代である50~64歳の世代の数値が、右肩上がりに伸びているなど、大変厳しい状況が窺がえます。
介護等離職後1年経過時点での無業者の推移
※横軸の年は各年10月から翌年9月までの期間を表示
出典:総務省「就業構造基本調査」
(平成29年度)
介護が始まって離職した期間は?
転職者(離職して転職した方、以下同様)と介護専念者(離職して介護に専念した方、以下同様)に、介護開始から会社を辞めるまでの期間を訊ねました。
転職者・介護専念者の5割強が
1年以内に離職
- 転職者、介護専念者ともに、5割強の人が、親が介護状態になってから1年以内に離職しています
- 介護専念者は男女とも12.9%の人が、介護状態になったら「すぐに」離職したと回答しており、転職者より高い割合を示しています。「すぐに」と「6ヵ月以下」を合わせた割合も、男性42.0%、女性46.4%と転職者より明らかに高くなっています
- 一方で、転職者、介護離職者とも、5年を超えてから辞めた人も10%程度存在します
- 介護開始から離職までの平均年数は、転職者、介護専念者ともに2~3年でした
介護開始から介護開始当時の勤務先を
辞めるまでの期間
出典:明治安田生活福祉研究所(現 明治安田総合研究所)、ダイヤ高齢社会研究財団
「仕事と介護の両立と介護離職」(2014年)
離職の最大のきっかけは?
何がきっかけで介護離職を決断したかについて、転職者と介護専念者に訊ねました。
離職の最大のきっかけは
「自分以外に親を介護する人がいない」
- 転職者の場合、「自分以外に親を介護する人がいない」とした回答が男女ともに最多で、男性22.6%、女性20.6%でした
- 介護専念者の場合も同様に、男女ともに「自分以外に親を介護する人がいない」とした回答が最多で、男性26.0%、女性21.3%。いずれも転職者を上回っています
- 兄弟姉妹数の減少や未婚化により、介護の担い手が減少し、「自分しかいない」状況になる人は今後さらに増加していくことも懸念されます
介護離職の直接のきっかけ
出典:明治安田生活福祉研究所(現 明治安田総合研究所)、ダイヤ高齢社会研究財団
「仕事と介護の両立と介護離職」(2014年)
【執筆者・監修者プロフィール】
グラース社労士事務所代表。
特定社会保険労務士。
人事系アウトソーシング会社、社会保険労務士事務所に従事、その後グラース社労士事務所を設立。
ワーク・ライフ・バランスを中心にした講演、執筆、コンサルティングを行なう。
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