新田社労士監修・両立マニュアル介護と仕事を
両立させるために
「介護と仕事を両立する」ことについて、こんな「不安」をお持ちではないですか?あてはまる「不安」にチェックしてみてください。
不安 |
チェック |
家にいる時間が少ない(時間) | |
そばにいてあげないと不安 (心理) |
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家事や介助ができない(技術) | |
介護サービスや利用方法を 知らない(情報) |
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職場に迷惑をかける、 人事上の不安(仕事) |
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子育てが終わっていない (ダブルケア) |
いざ介護が始まったとき、かけがえのない方のためにできるだけのことはしてあげたい、と考えるのは自然なことです。しかし、介護が続く期間は先が見えません。場合によっては、介護が重篤化し、仕事に支障がでて、退職を考えざるを得ないことがあるかもしれません。
しかしながら、何より大事なことは、「ひとりで抱え込まない(孤立の穴に落ちない)」ということです。
そのためには、周囲に「助け」を求め連携をとることが大切です。この「助けを求める」ことこそ、自身の「プライド」を守ることにもつながるのです。
自分が頑張るしかない |
自分ですべてできる |
他人に迷惑をかけたくない |
会社や近所に知られたくない |
では、具体的にどのようにすればよいか、そのポイントを4つご紹介します。受け止めるべきところはきちんと受け止めながら、実践し介護と仕事を両立させましょう。
【POINT1】
「制度を知り、利用する」
昔と違い、現在は公的なものから民間・ボランティアまで、介護を支えるさまざまなサービスがあります。制度があることすら知らない、ということのないようにどんな制度があるのか知っておくだけで楽になります。実際に介護が必要となったときに、地域の専門職に具体的に内容を教えてもらいながら利用につなげましょう。
公的介護保険制度について
地域・民間の介護サービスについて
ケアマネジャーとの信頼関係は大切
- ケアマネジャーは、要介護者および介護者(介護を行なう方)の希望を汲みながらケアプランを作成します。ケアプランは見直しが可能ですので、介護ニーズや自身の仕事状況の変化により利用中の介護保険サービスを変更したい場合には、ケアマネジャーにその都度相談するのがよいでしょう。
- また、ケアマネジャーは介護者との会話を通じて、介護者の悩みや不安を発見することも仕事の一つとしています。会話の内容自体は介護とは関係なくても、解決策を介護サービスに見出せることもあるのです。ストレスの悩みでもかまいません。何かあればケアマネジャーに相談してください。
- なお、ケアマネジャーによるサービスは事業所と利用者間での契約に基づいて提供されるものであり、ケアマネジャーを変更することも可能です。適宜、市区町村や地域包括支援センター等に相談しましょう。
【POINT2】「相談する」
家族による支援で大切なことは、外部と連携するということです。ひとりで大丈夫だと思っていても、地域情報に乏しかったり、適切な介護方法を知らなかったりと情報不足に陥りがちです。困っていなくても、相談できる場所があることを知っておくことは大切です。
介護には心身ともに継続的なエネルギーが必要ですから、ひとりで考えず第三者の考えも参考にしながら、日々の介護に活かしましょう。「介助」するだけが介護ではありません。
地域に相談
地域には、その地域独自の高齢者サービスが数多くあります。
最寄りの窓口で情報収集しましょう。
地域包括支援センター ※自治体によっては名称が |
社会福祉協議会 |
市区町村の介護保険を扱う部署 例)介護保険課、高齢者福祉課 |
職場に相談
「家族等の介護を行なっている」ことを伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用しましょう。
- 「介護」と聞くと、どうしても「大変だ」というイメージが先行してしまいがちです。このため、家族等の介護を行なっていてもそのことを職場の上司や同僚に伝えている方はそれほど多くないのが実態です。
- しかしながら、介護を行なっていれば「要介護者の通院に付き添うため、月に1回は2時間遅れて出社する」「要介護者の具合が急に悪くなったため、仕事を休まなければならなくなった」といった状況が生じるかもしれません。このような場合、自身の仕事を同僚等に任せなければならないこともあるでしょう。
- 介護は誰もが直面する可能性があるものであり、自分だけのことではありません。また、遅刻や休暇は介護を理由としたものだと上司や同僚が分かっていれば、協力も得られやすくなります。
逆に、介護を行なっていることを言わなければ「最近の彼・彼女は遅刻が多いなど勤務態度がよくない」とみなされてしまうおそれもあります。すなわち、職場に介護を行なっていることを伝えるのは、デメリットではなくメリットとなるのです。 - また、勤務先には育児・介護休業法に基づいた「仕事と介護の両立支援制度(例えば、介護休業や介護休暇など)」が整備されています。勤務先により制度の詳細は異なりますが、仕事と介護の両立のためには必要に応じてこれら制度を上手に利用していきましょう。
- 介護休業期間には期限がありますので、介護サービスを利用せず自分ひとりで介護をする期間に充ててしまうと、復帰が難しくなります。
むしろ介護休業期間は「転院・施設入所・引越しなど環境を変える」「介護サービスを選定・契約・利用する」など、介護体制を整える目的で利用することをお勧めします。つまり両立していくために利用するという視点を持つことが重要です。
【POINT3】
「家族と良好な関係を築く」
- 介護はいつ始まるか分かりません。このため、介護に直面した場合にどうするかを自身や両親が元気なうちから話し合っておくことが重要です。お正月やお盆など家族が集まる機会を活用するとよいでしょう。
- 介護には費用がかかりますが、これは原則として要介護者の貯金や年金で賄うものと考えましょう。親の財産のことではなく、介護費用についてどの程度賄えるのか、生命保険の加入の有無なども含めて「見える化」しておくことが望まれます。
- 家族の良好な関係はスムーズな介護にもつながります。日ごろからコミュニケーションをとりましょう。
【POINT4】
「自分の時間を確保する」
- ひとりで介護を抱え込んだり介護のことばかり考えていると、疲れがたまり悲観的になるなど、いわゆる「介護うつの状態」になる可能性が高まります。そうなれば仕事にも好ましくない影響を与えてしまうでしょう。
- 介護者はまず、自身の健康を第一に考える必要があります。介護者が倒れてしまったら元も子もないためです。ではどうしたらよいでしょうか。ポイントとなるのはやはり、介護サービスの利用や家族の協力です。
- 自身の仕事が休みの日に介護サービスを利用すれば、その時間を息抜きの時間として活用できます。時には息抜きのために介護サービスを利用したり、家族にすべてを任せてしまうという選択肢もあります。
介護はいつ始まるかだけではなく、いつ終わるかも分かりません。深刻に捉えすぎないことが、仕事と介護の両立には必要です。
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