MY介護の広場トップ >  介護従事者・事業者のみなさま >  高齢者レクリエーション >  お年寄りのためのセラピー入門 >  第2回 動物が与える癒やし「アニマルセラピー」【3.アニマルセラピーの実際――グループホームなぎさの取り組み】

3.アニマルセラピーの実際――グループホームなぎさの取り組み

 愛媛県松山市のグループホームなぎさは、犬の「カンナ」(メス)と触れ合うアニマルセラピーを実施しています。入居者は歩行リハビリ時に「カンナ」の様子を見たり、声かけをしたりしています。

 「カンナ」の前には「リュウ」(パピヨン、オス)がいました。現在、「リュウ」は同一法人内の特養施設で活躍中ですが、グループホームなぎさでは、アニマルセラピーを実施するにあたり、事前に入居者の犬の好き嫌いに関する調査を実施したといいます。
 すると嫌いが3名、好きが2名、普通が4名でした。そこで、それぞれの好き嫌いに応じて対策を講じることにしました。

 犬嫌いな人に対しては犬を近づけないように配慮し、遠くから犬の状態を観察できるようにしました。まずは、犬に慣れてもらうためです。つぎに、犬嫌いになった理由(野良犬が怖かった、犬に追いかけられたなど)に「リュウ」は当てはまらないことを説明しました。
 一方、犬好きな人に対しては、どうしても犬を独り占めしたがる傾向があるので、「リュウ」はグループホーム全体で飼育していくことを納得してもらいました。

 こうした準備段階を経て、アニマルセラピーはグループホームなぎさに定着したのです。
 「リュウ」と触れ合う中で、90歳の女性は「犬は私が面倒みてあげるけん、介護職員さんは用事をしな」と言って、犬をひざに乗せかわいがってくれたといいます。夜間眠れないことも多かったのですが、アニマルセラピー開始後は昼の活動が増えて、よく眠れるようになりました。
 また、いつも「家に帰りたい」と言い、興奮すると言動が激しくなっていた79歳の女性は、犬にえさを与えたりし世話をするようになりました。犬といるときは穏やかに過ごし、帰宅願望も出てきませんでした。

お年寄りにとって、
アニマルセラピーは

  • 動物の世話をすることで自尊心や生きがい、安心感が生まれる
  • 孤独感や疎外感から解放される
  • 反論しない話し相手となる
  • 温かく(体温が人間よりも高い)、かわいらしい存在の動物に触れることで、情緒的な満足感が得られる
  • 肩書や年齢、貧富などに関係ない愛情の対象が生まれる
  • 生活のリズムが生まれる
  • 動物に声をかけることで発声のリハビリになる
  • 動物に触れたいと思うことで体を動かす意欲が湧く
  • 動物とのコミュニケーションで表現力が回復する
  • お年寄り同士が動物のことを話題にし、会話するようになる

 など、さまざまな変化をもたらします。
 そうであるだけに、アニマルセラピー実施前にはお年寄りに対する細やかな配慮が必要となります。


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