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増え続ける独居老人と、かかえる不安

一般公開日:2023.3.19

 核家族化の影響や未婚率の増加を受けて、ひとり暮らしの高齢者が増加しています。2040年には世帯主が65歳以上の「高齢世帯」のうち40%がひとり暮らしになると推計されています(※1)。

 タカシさん(70代)の妻は自宅で倒れて救急搬送されました。遠くで暮らす長男はすぐに来てくれたものの、仕事の関係で2泊して飛行機で戻っていきました。妻は治療の甲斐なく、2週間後に死亡。長男夫婦は、家族とともに駆けつけてくれましたが死に目には会えず、葬儀と初七日を終えると早々に帰っていきました。

 気付くと、タカシさんは広い自宅にひとりきり...。「その時、これからはずっとひとりなんだと思い知りました。忙しそうな長男夫婦に『もうちょっと居てほしい』とは言えなかった。仲の良い友人もいない。どうして妻は僕より先に逝ってしまったんだろう」とタカシさんはうなだれます。

 タカシさんに限った話ではありません。誰しも老後にひとり暮らしになる可能性があります。一緒に暮らす家族がいるのと、いないのでは、生活に大きな違いが...。

 60歳以上の人に他者とのコミュニケーションを聞いた調査(※2)があります。会話頻度について、2人以上の世帯では「毎日会話をしていない」のはわずか4%なのに対し、ひとり暮らしでは37.2%。

 また、「日常生活のなかで誰かから頼られることがあるか」に対し、2人以上の世帯では「頼られることはない」は23.7%ですが、ひとり暮らしでは62.8%も。

 さらに、「現在、何らかの社会的な活動を行なっているか」の問いに、ひとり暮らしの7割が「行なっていない」と回答しています。ひとり暮らしの高齢者は、会話が乏しく、社会的孤立に陥りやすい状況が推察されます。

 いま、誰かと暮らしている人も、いつかタカシさんのように、「ひとり」となってしまうかもしれません。どのようなリスクがあり、どう心構えをしておけばいいのか、次回以降一緒に考えてみましょう。

(※1)2019年「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」:国立社会保障・人口問題研究所

(※2)2018年「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」:内閣府

【執筆者プロフィール】

太田 差惠子/おおた さえこ

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長。
1994年頃より高齢化社会を見すえながらの取材、執筆を開始。
96年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げる。
2010年立教大学大学院にて、介護・社会保障・ワークライフバランスなどを体系立てて学ぶ。著書多数。

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