独居でも安心して生活できる
これまでの回で、日々連絡を取り合える人、イザというときに助けてくれる人の存在がひとり暮らしには重要だと理解いただけたかと思います。
しかし、心身が衰えてくると、それだけでは課題解決とはいきません。例えば、病気やケガにより自身で買い物に行けない状態になるとします。イザというときには助けてもらえても、"毎日"となると話は違います。
カヨコさん(40代)の叔母(80代)は車で1時間ほどのところでひとり暮らしをしています。亡くなった母親の妹です。叔母は独身で、子どももいません。カヨコさんは、幼かったころから叔母にはよくしてもらっていたので、月に1回は様子を見に訪ねていました。
しかし、3ヵ月程前、叔母は転倒して骨折。「入院中は、何度か見舞い、手助けしました。でも、退院後の介護となると、私には難しい。仕事もあるし、いずれは父親の介護もあります。冷たいようだけれど、叔母の介護までは......」と話します。叔母には、ざっくばらんにその通り話したところ、当然のこととして受け止めてくれました。
では、ひとり暮らしで日常的に介護が必要になった場合、どのようにすればいいのでしょう。実は、家族構成で違いがあるわけではありません。同居の家族がいてもいなくても、家族だけで介護を行なうことは困難です。
自宅で過ごすためには、介護保険の申請をして、ホームヘルプサービスやデイサービスを利用します。介護保険以外にもさまざまなサービスがあります(※)。
家族と同居の場合は、家族が行なえる部分があるかもしれませんが、ひとり暮らしではそれがない分、サービスに頼る比率は大きくなるでしょう。
介護保険や自治体サービスなどの申請や情報提供については、地元の地域包括支援センターで対応してくれます。要介護度が高くなると、高齢者施設に入居する方が安心できる面もあると思います。
とはいえ、たとえエンディングノートを書き、自身の希望や介護費用の見通し等を書いて信頼できる人に伝えたり、施設に入居したりしても、ケガや病気から免れられるわけではありません。孤独に陥ったり、さみしくなったりもするでしょう。
つまり、元気なときと同様、日々連絡を取り合える家族や知人、イザというときに助けてくれる人の存在は大事だということ。"頼れる人"は、一朝一夕に作れるものではないので、日ごろから、他者とのかかわりを大切に過ごしたいものです。
【執筆者プロフィール】
太田 差惠子/おおた さえこ
介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長。
1994年頃より高齢化社会を見すえながらの取材、執筆を開始。
96年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げる。
2010年立教大学大学院にて、介護・社会保障・ワークライフバランスなどを体系立てて学ぶ。著書多数。
関連著書紹介
故郷の親が老いたとき 46の遠距離介護ストーリー
70歳すぎた親をささえる72の方法
老親介護とお金 ビジネスマンの介護心得