MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  老後の独居不安・事例に見る独居老人の課題

事例に見る独居老人の課題

一般公開日:2023.3.19

 前回、ひとり暮らしの高齢者は会話が乏しく、社会的な孤立に陥りやすい状況にあるとお話しました。寂しさからか、なにかを拠り所にしすぎた結果、問題になってしまうことがあります。

 ミチさん(40代)の伯父(70代)はひとり暮らしです。若いころに離婚し、子どもはおらず住宅街の戸建てでひとり暮らしをしています。

 「ずっと付き合いはなかったのですが、伯父の家がゴミ屋敷化しているとご近所から苦情がくるようになったんです。何とかしろって」とミチさん。「伯父の弟である父は寝たきりで老人ホームに入居しており、動けるのは私しかおらず...」

 ミチさんは役所に勤める公務員で、別の自治体とはいえ、ゴミ屋敷が周辺へ及ぼす影響を知っており放置もできず、何度か伯父宅を訪問。「できれば、伯父をショートステイに預けて、その間に清掃業者を入れたいと考えています。でも、片付けようとすると、すごい形相で怒るんです」とミチさんは頭を抱えます。

 ミチさんは伯父の認知症を疑い、現在、地域包括支援センターなどとも相談しているところだとか。

 もう1人タクミさん(50代・男性)のケースを紹介しましょう。父親が亡くなった後、実家ではタクミさんの母親(80代)がひとり暮らし。「実は、母のところに、呉服屋が出入りしているんです。僕が『来ないでください』と電話しても、どうやら母が自宅に呼ぶようで。その結果、高額な着物を買ってしまって」とタクミさんはため息をつきます。

 着ることのない着物が何着も...。「もう少し認知症が重度になったら成年後見制度を使って契約を解除できるそうですが、母はまだそういう状況にありません」

 本来なら、母親が母親のお金を何に使おうと子どもがとやかく言えることではないでしょう。けれども、もし財産が底をつき、介護費用の捻出が難しくなったら...とタクミさんは心配しています。

 ミチさんの伯父のケースもタクミさんの母親のケースも、地域から孤立しており、「ポツン」としていることが事態を悪化させている一因でしょう。孤独だから物(ゴミ・着物)に執着し、執着する物を排除しようとする人は"敵"となり、聞く耳を貸さない...。

 もちろん、ひとり暮らしの方が全員こうなるわけではありません。けれども、「ポツン」としていると、こうした事態に陥るリスクは高まります。ひとり暮らしだからこそ(ひとり暮らしでなくても)、日々話せる友人知人を見つけ、出かけていくところを作っておくことが重要なのではないでしょうか。

 また、もし身近な高齢者にこういう状況が生じたら、ミチさんも相談している地域包括支援センターにアプローチをしてみましょう。各自治体にあり、介護と福祉の専門家が無料でサポートしてくれます。

【執筆者プロフィール】

太田 差惠子/おおた さえこ

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長。
1994年頃より高齢化社会を見すえながらの取材、執筆を開始。
96年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げる。
2010年立教大学大学院にて、介護・社会保障・ワークライフバランスなどを体系立てて学ぶ。著書多数。

関連著書紹介
故郷の親が老いたとき 46の遠距離介護ストーリー
70歳すぎた親をささえる72の方法
老親介護とお金 ビジネスマンの介護心得

MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  老後の独居不安・事例に見る独居老人の課題