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事例から考える"8050問題"と高齢者介護(その1)

一般公開日:2023.3.19

 前回お話しましたように"8050問題"の内容は多種多様です。親自身が今はまだ元気ですが高齢になり、これからのことを悩んでいる事例をご紹介します。

 Aさん(80歳)は、妻が5年前に他界し、息子Bさん(52歳)と一緒に暮らしています。Bさんは高校のときから長い間ひきこもっています。生活費や毎日の家事等の生活は両親がすべて支えてきました。妻が亡くなり現在は父親のAさんがひとりで担っています。
 Bさんは穏やかで優しい性格であり、親子関係は良好です。一度、過去に両親はBさんを心配し、知人の紹介でBさんを職場体験させてもらったのですが、人間関係がうまくいきませんでした。Bさんは自信をなくしてしまい、ひきこもり状態で今の生活に至ります。

 Aさんは今年80歳になり、家事等をすることがつらくなってきました。誰も頼る人がいないためひとりでなんとか無理をして家事等をしています。
 近い将来、自分自身の介護が必要になった時の生活や介護費用のこと、同時にBさんのこと(息子はどのように暮らしていけばよいのか...)を悩んでいます。

 これまでは妻と相談、協力しながら生活を乗り越えてきました。今はひとりとなり、解決策が見いだせず、心配事が大きくなっています。

 町内会でAさんと年齢の近い、昔からの知り合いの副会長Cさんがいます。Cさんは気さくで話しやすい人です。「何か困ったことがあれば言うてや」と言ってくれます。しかし、Aさんは自分の今の家庭生活のことを本当に相談してよいのか悩んでいます。また、自分の家庭のような悩みを相談するところがあれば、相談にのってもらいたい思いもあります。

 今回の事例でAさんには話を聴いてもらえそうなCさんがいますので話を聴いてもらうのも一つの方法です。近所の人に自分の家庭生活のことを知られたくないという思いの人もいるでしょう。Cさんには、Aさんから相談を聴くことがあれば、「話してくれた内容は近所の誰にも言わないので安心して」というようなひとことも必要です。
 身近な関係者よりも、専門の相談機関の方が相談しやすい場合は、住んでいる地域にある地域包括支援センターに一度相談してみることも方法の一つでしょう。

 学校や職場で人間関係に悩んだり自信をなくした経験は誰しもあることだと思います。こういった場合に自分自身の力で乗り越えたということばかりではなく、自分のことを理解してくれる人との新たな出会いで乗り越えられたというケースも多いのではないでしょうか。
 あなたも周囲の支えがなければ、Bさんのように長年ひきこもってしまったかもしれません。Bさんのことを自分自身のこととして考えてみることも"8050問題"への支援で大切なことだと思います。

【執筆者プロフィール】

綾部 貴子/あやべ たかこ

桜花女子大学准教授 博士(学術)、社会福祉士、介護福祉士。
専門は、高齢者福祉、ケアマネジメント、介護福祉、地域福祉、障害者福祉等。

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