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老いを受け入れできることを大切に生きる

一般公開日:2023.9.17

 これまで6,000人くらいの高齢者を診てきて、この15年くらいは、アンチエイジングの世界的権威、クロード・ショーシャ先生に弟子入りして、アンチエイジングの研究や臨床を行なっているのだが、70代と80代では、やはり老い方が違うと感じている。70代までは、大多数の人は老いと闘うことができる。

 身体を動かしていると身体機能は通常中高年の延長レベルで維持されるし、頭を使っていると脳の機能も維持される。ルックスにしてもちょっとシワを伸ばしたり、頬をふっくらさせると50代にしか見えない人も大勢いる。

 ところが80代以降になると努力だけでは如何いかんともしがたいことが出てくる。
 歩いているはずなのに、筋肉が落ちてきたり、頭を使っているのに認知症を発症したり、足腰が弱っているためにふらついて転倒して骨折すると、リハビリをしても歩行機能がなかなか戻らないことも出てくる。

 もちろん個人差があるので、そうならない人もたくさんいるのだが、衰えは覚悟しておいたほうがいいと私は思う。

 老いを受け入れないとつい無理をしてしまう。耳が聞こえにくいのに補聴器を使わず、かえって認知機能が落ちる人もいる。杖を拒絶して、転倒骨折する人もいる。素直に老いを受け入れよう。さまざまな器具の進歩は著しい。自動運転の車だって遠からず使えるようになるだろう。

 もう一つ知っておいてほしいのは、老いというのはすべての部分に一様にくるわけではないことだ。足腰が弱っても頭がしっかりしている人もいるし、認知症になってもできることはたくさん残っている。

 選択と集中ではないが、できないことは素直に受け入れて、できることをもっと伸ばそうというパラリンピックの発想をもてば、幸せな80代を送れると私は信じている。

【執筆者プロフィール】

和田 秀樹/わだ ひでき

東京大学医学部卒業。専門は老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学。
現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。
高齢者専門の精神科医として、30年以上高齢者医療の現場に携わる。
著書『80歳の壁』などベストセラー多数。

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