MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  高齢者の歩行と健康・歩行と健康の関連性

歩行と健康の関連性

一般公開日:2023.9.17

 歩行することで具体的にどのような健康効果があるのでしょうか。
 紹介しきれないほどたくさんのすばらしい健康効果があるのですが、ここでは少しだけご紹介します。

歩くことは最高の認知症予防策

 認知症予防のために計算などをして「できるだけ頭を使って生活した方が良い」という認識を持っている方も多いと思います。しかし、実は認知症予防を含め、脳の機能を維持させるためには「運動」が最適です。

 Giovanni Ravagliaらの研究(※1)によると、歩行習慣がある人や日常生活でよく身体を動かす人は、認知症のリスクが7割以上も低下するとされています。歩くことで全身の血流量が増加し、認知症のもとになる脳の老廃物が蓄積しにくくなります。

 また、30分以上の歩行などの有酸素運動を行なうことで、脳の記憶を司る海馬の神経細胞を発達させるたんぱく質「BDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌されます。つまり歩くことは、脳にとって「最高の栄養」になります。

世界で10人中1人の割合で発症する生活習慣病の予防

 2021年、国際糖尿病連合(IDF)は、世界の成人の糖尿病有病者数が5億3,700万人に達し、10人に1人が糖尿病を発症しているという驚きの調査結果を発表しました(※2)。数多くある疾病のなかで、我々現代人が最も注意すべき疾患は糖尿病を含む生活習慣病です。

 生活習慣病とは、「食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称」とされ、悪性新生物(がん)、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)、脳血管障害・脳卒中、高尿酸血症などがあたります。

 基本的に痛みなどの自覚症状に乏しいのが生活習慣病の特徴であり、その治療は「自覚症状の緩和」ではなく、この病態が慢性的になった結果生じる「合併症の予防」が重要になります。

 特に、日本人の死因の約半数を占める悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患は生活習慣病との関わりが強いとされています。生活習慣病のなかでも特に、肥満、高血圧症は「万病の元」ともいわれ、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病の発症、進展のリスクが高まることが知られています。

 厚生労働省によると、生活習慣病を予防するために、週2回以上、1回30分以上の息が少しはずむ程度の運動を習慣化することを推奨しており、歩行が最も適している運動になります。(※3)

<参考>

(※1):国土交通省HP 健康増進のライフスタイル形成支援・連携方策に関する調査(平成20年)

(※2):糖尿病ネットワークHP

(※3):厚生労働省HP「健康日本21(身体活動・運動)」

【執筆者プロフィール】

西野 英行/にしの ひでゆき

理学療法士。福祉用具専門相談員として介護業界で3年間勤務した後、理学療法士の資格を取得。
現在は訪問リハビリテーションに勤務。リハビリのブログ「未来のPT」を運営している。
著書『100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方』がある。

MY介護の広場トップ >  一般のみなさま >  介護の知恵袋 >  メールマガジン配信コラム&エッセイ~専門家が語る介護の話~ >  高齢者の歩行と健康・歩行と健康の関連性