自宅の売却はどうする?
今回のテーマは老人ホームに入居する際に持ち家をどうするかです。
入居をご検討されている方が持ち家に独居の場合、家の処分をどうするかは悩みどころの一つです。希望する老人ホームに入居する際の費用として処分したい方もいらっしゃいますし、空き家にしてしまっても管理が問題になります。もし私たちがそのような相談を受けた場合、できれば入居時に持ち家は手放さないほうがいいとアドバイスします。
最近、ある富裕層向けの自立型老人ホームに入居されている方から転居のご相談がありました。転居の理由は現在のホームへの不満、特に食事面とスタッフとの人間関係でした。そのホームに決めた理由を聞いてみると、お身体はお元気でしたが、独居の寂しさと将来への不安から老人ホーム入居を考えたようです。
パンフレットなどを自分で集めて、はじめて見学に行った老人ホームが気に入り、即入居。同時に自宅を売却し、家財道具もすべて手放してしまったそうです。入居後は新しい生活ということもあり特に不満を持つことはなかったようなのですが、1ヵ月もすると少しずつ不満がでてきました。
食事が口に合わないと感じるようになり、そのことをスタッフへ言ったところ、スタッフとの関係もギクシャクするようになったといいます。このままここで暮らせるのか不安に思うようになり、転居を考えるようになりました。
転居に際し、大きな問題が一つありました。帰れる自宅を処分してしまったことです。本来であればいったん自宅に帰りご自身の希望条件などを再度考えたうえで老人ホーム探しをお手伝いしたいのですが、そうはいかない状況です。
お話を聞くと、ご相談者様の現施設へのストレスは限界近くに感じたので、急いで転居先を探すことになりました。結果的にご予算的にもご相談者様のニーズにも沿った老人ホームが見つかり転居することが出来たのですが、お元気とはいえ高齢の方に短期間で転居を強いてしまうことになりました。
今回のケースでは、お元気であればあるほど老人ホームと同時に自宅売却は避けた方が良いことを学ばせてもらいました。いくら見学時に気に入ったホームでも実際の生活では予期せぬことが起こりえます。このホームで最後まで暮らせると思えるまでは、できれば自宅は残しておいた方が良いでしょう。
【執筆者プロフィール】
脇 俊介/わき しゅんすけ
株式会社プランドゥ代表取締役。
社長業と兼任し、入居相談員としても相談者をサポート。
介護職員初任者研修の資格を有し、介護や施設選びのポイントについてアドバイスを行ない、近年は老人ホームに関する講演活動も精力的に取り組んでいる。