高齢者に多い眼の病気
「夕方になると眼がしょぼしょぼする」「字が見えにくくなり、大好きだった手芸がおっくうになった」などの声が高齢者から聞かれます。高齢者の眼の健康は、その人のQOL(Quality of Life、生活の質)に直接影響を与えます。
視力が低下すると、日常生活での活動に影響が出て、周囲の助けを借りることが増える可能性があります。これにより、高齢者の自立性が低下することがあります。
眼の病気や視力低下は、外出の障害となり、友人や家族との交流が減少する原因となります。これにより社会的孤立が生じ、心の健康にも影響を与えることがあります。また、視力低下は、身体のバランス感覚が悪くなって、転倒や事故のリスクを高める要因となります。
これらのことから、適切な予防や治療を行ない、眼の健康を保つことは、高齢者がより豊かで充実した生活を送るために非常に重要です。高齢者に多い眼の病気としては、以下のようなものがあります。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性は、物を見るのに重要な部分である網膜の黄斑部に異常血管が生じることで起こる病気です。視力低下や歪みなどの症状が現れ、進行すると失明に至ることもあります。
白内障
白内障は、水晶体が濁ることで起こる病気です。視力低下や眩しさなどの症状が現れ、進行し日常生活に支障をきたした際には手術による治療が必要です。
緑内障
緑内障は、視野が徐々に狭くなってくる病気で、進行すると失明に至る疾患です。眼圧の上昇によって視神経が障害されることが原因の一つですが、眼圧が正常範囲内でも視神経が障害される正常眼圧緑内障が日本人には一番多いとされています。
眼瞼下垂
加齢に伴い瞼を上げる筋肉の働きが弱くなるなど、皮膚にたるみが生じることで瞼が十分に上がらず、目が開きづらくなる病気です。視界が狭くなったり、頭痛、肩こりなどの症状を伴ったりすることもあります。治療法は、瞼を上げる筋肉を短縮させる手術や皮膚のたるみをとる手術があります。
視力低下や眼の病気の早期発見のためには、定期的な眼の健康チェックが大切です。
次回は、特に高齢者に多い白内障と緑内障について考えてみましょう。
【監修者プロフィール】
玉城 麻夏/たまき あさか
新潟大学医学部卒。順天堂大学浦安病院眼科医を経て、現在玉城眼科に勤務。
日本眼科学会認定眼科専門医。