ペットがもたらす高齢者への良い影響
家庭で動物をペットとして飼われる方がたくさんいらっしゃいます。
私は長年、ペットとして動物を飼う飼い主さんの抱える問題解決のサポートを行ない、諸事情で手放される動物たちを少しでも減らす手助けとなる活動を行なっています。
さて、動物を飼うことは高齢者にどのような影響があるのでしょうか?
心身ともに健康になる
動物を飼うと日々の世話によって規則的な生活を送るようになります。生活のなかにメリハリが生まれ、「ペットたちのために健康でいなければ」という意識から、飼い主さん自身の健康意識が高まり、健康管理にもしっかり向き合うようになります。
ご家族でお過ごしの場合は、家族内の会話が増えるきっかけを作ってくれるでしょう。
犬を迎えた場合には、お散歩にでかけるようになるため、必然的に日ごろの運動量が増え、筋力アップにもつながります。
季節を感じることができる犬のお散歩では気分転換にもなりますし、同じように犬のお散歩をしている飼い主さんと出会い、「いぬとも」として会話を楽しむだけではなく、しつけや日ごろの疑問、今後の不安に対して、良い相談者を見つけることにつながります。
また、犬に触れると「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌により、心拍数や血圧が安定し、ストレス減少や気持ちが落ち着くことにつながるといった研究結果もあるようです(※)。
お互いの存在感に幸福感を得る
必要とされる幸せ
飼育下にある動物たちが生きていくためには、飼い主の存在が不可欠です。
そのため、世話をする、心配をする、楽しさを分かち合う、というお互いが存在するからこそ感じられる幸福感「必要とされている」という思いは、生きている喜びにもつながります。
笑うことが増える
ついつい笑ってしまうことも多い動物たちの行動は、飼い主はもちろん周囲の笑顔を増やします。笑いが増えることで、免疫力が高まることは皆さんもご存じのとおりですが、笑ったときの呼吸により、たくさんの酸素が取り込まれ血行も良くなりますし、脳の働きや筋力アップも期待できるといわれています。
うさぎやハムスターなどの小さな動物たちが首をかしげる姿や、犬がおもちゃをくわえてやってきて「あそんで」という姿を想像するだけでも微笑んでしまいませんか?
では、動物を飼うことは良いことばかりでしょうか?
動物も歳をとるし、お金もかかる
最近では、ペットの寿命が延びています。動物の種類によっては、長い寿命を持つものもいます。例えば、人に友好的で綺麗なオウムたちのなかには、30年以上生きる種類もあります。
動物たちも歳をとりますので、介護や治療が必要になり、病気にもかかりやすくなるのは私たち人間と同じです。フード代、医療費、お世話グッズなどにお金がかかりますし、旅行や災害発生時には、動物たちと一緒に行動ができるか?といった心配もでてきます。
かわいそうだからと言って、外にいる猫を複数保護し、気がついたら数十匹になってしまったというケースも少なくありません。
動物が可愛い、健康に良い、癒される、というメリットと一緒に、今の生活のなかに動物を迎えた場合の難しい点を考えることが大切です。最期まで飼えるかどうかを考えることができるのは、迎える前だけです。
次回は、動物を飼う前に知っておくべきことについて考えます。
※出典・参考文献
ペットフード協会調べ,シーゲル(Siegel,M.,1990),太田光明(2013)
「笑顔あふれる、ペットとの幸せな暮らし。」
発行元 ペットとの共生推進協議会/監修 一般社団法人ペットフード協会(2014)
【執筆者プロフィール】
岩浪 真紀/いわなみ まき
p.a.n.d.a.研究室・東京都動物愛護推進員・東京都動物愛護管理審議会委員・愛玩動物飼養管理士1級。
ペットの適正飼養普及啓発活動として、ボランティアや団体職員として活動。
飼い主の抱える問題解決のサポートを行ない、諸事情で手放される動物たちを少しでも減らす活動を行なっている。