老老介護・認認介護の課題
最近では「人生100年時代」と言われるようになりました。
住み慣れた地域や自宅で長生きをしたいけれど、一方で家族の迷惑はかけたくない...
長年の介護の相談現場では、そのような高齢者の皆さんから多くの声を聞いてきました。
夫婦で支え合うふたり暮らしであっても、平均寿命の進展から、いわゆる「老老介護」(高齢者が、ほかの高齢者を介護する状態)、「認認介護」(高齢の認知症の人が、ほかの高齢の認知症の人を介護する状態)の問題が増加しています。理由は経済的な余裕がない、他人に頼ることに抵抗感がある、身近な人に相談がしづらいなどが挙げられます。
双方に共通する特有な問題としては、よくもわるくも「ひとり暮らしではない(ふたり暮らしである)」という点に尽きると思います。ひとり暮らしであれば、介護が必要な親も、子どもたちも対策がしやすいのに対して、ふたり暮らしでいることで、より現状を複雑に、より見えにくくなったと考えられます。
具体的にはどのような特有の問題が生じてくるのでしょうか。
老老介護
体力的に身体的限界や危険性がある
そもそも多くの高齢者は、介護状態(要支援状態も含む)のふたりがなんとか支え合って生活をしています。支え合うことで無理をしてしまい、結果として介護する側も、介護される側も大きな負担となってしまいます。
生活状況の把握が難しくなる
お盆や正月に訪れる、または電話でご両親の日頃の状況について確認をしていると思います。しかし、「最近はどう?」と聞いても「大丈夫」との返答が返ってくるだけで、実際の生活実態がつかめないことが少なくありません。
社会的な接点が減り認知症になる可能性も
筋肉は使わないと衰えますが、脳も同じで使わないと衰える可能性があります。老老介護で、外出できなくなると、社会とのつながりが希薄になります。
また、体力的にも精神的にも、日常生活の維持で精一杯になり、なんとか生活はできていたとしても、運動、栄養面などの低下がみられます。
認認介護
体調管理が難しくなる
身体面の低下に加えて、精神面(判断能力)の低下が生じるため、服薬管理や、食事・栄養管理が難しくなります。
金銭管理が難しくなる
キャッシュカードの暗証番号がわからなくなることもあり、高額な商品を購入するなどの詐欺被害にも遭いやすくなります。
緊急事態の対応が難しくなる
火の不始末やSOSの発信が難しくなります。
認知症と言っても程度に差があり、また知的な機能が一度に失われるわけではありません。それまでの生活でずっと続けてきたことは体が覚えています。
「できているように見える」ことがあるため、外からは生活実態が見えにくくなりがちです。そのため認認介護の問題は老老介護と比べても、より深刻な問題となります。次回は事例を通して考えます。
【執筆者プロフィール】
山本 武尊/やまもと たける
社会保険労務士・社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉経営士1級・ファイナンシャルプランナー2級(AFP)。大学(福祉学)卒業後、大手教育会社を経て、介護業界へ転身。元地域包括支援センターでセンター長として活動。
介護業界の人の優しさに触れると共に、低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため社会保険労務士となる。