介護休業と別で取得できる「介護休暇」とは何か?
介護休業をあてるのが不合理な
ケースで活用
介護休業を使って介護サービス等を手配した後も、家族にとっては本人のためにかかわる時間がたびたび必要になります。例えば、本人の通院に同行したり、今後の介護サービスについてケアマネジャーと打ち合わせるなどが想定されます。
いずれも回数が多いと同時に1回あたりに費やす時間が短いゆえ、「3回まで」という制限がある介護休業をあてるのは不合理でしょう。そこで介護休業法では、介護休業とは別に「介護休暇」を取得できることが定められています。
対象家族ひとりにつき年5日、
時間単位も可能
この介護休暇は、対象家族がひとりの場合は年5日まで、ふたり以上の場合は年10日まで取得できます。取得単位は1日または時間単位です。時間単位の場合は、休暇を取得した時間数の合計が1日の所定労働時間に達すると「1日」という計算になります。
なお、時間単位で取得する場合、仕事を途中で抜けてまた戻ってくるという「中抜け」は想定されていません。ただし、会社によって独自に認めることはOKです。
法改正で2025年4月から
「除外対象」も変わる
注意したいのは、この「介護休暇」を取得できる労働者の範囲です。1日単位で雇用されている人は除外されるのに加え、労使協定の締結によって除外されるケースがあります。それが「1週間の労働時間が2日以下」の労働者です。
また、ライン作業などに就いていて、介護休暇を時間単位で取得することが難しいケースでは、やはり労使協定によって「1日単位での取得」のみとなります。
なお、2024年11月時点では、上記の労使協定によって「勤続6ヵ月未満の労働者」も介護休暇からの除外が可能です。ただし、前回述べた2024年の法改正により、2025年4月からは除外対象から削除されることになりました。
このように、原則として時間単位でも取得できるという点で、介護休暇は家族の介護を手がける働き手にとって便利な仕組みです。国の調査でも、介護休業の利用者が5万1千人であるのに対して、介護休暇の利用者は約3倍の14万5千人となっていることがわかります(令和4年就業構造基本調査)。この制度をさらに上手に使うために、次回は取得に際してのポイントを掘り下げましょう。
◆介護休業・介護休暇の利用者数の詳細については以下をご覧ください。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。
著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。