「介護休暇」の上手な活用法について
介護休業と介護休暇、どのように
使い分ける?
年5回まで取得できる「介護休暇」は毎年更新され、時間単位での取得も可能です。とはいえ、日数が限られることに違いはありませんから、上手に使うことが肝心です。まずは、通算93日となっている介護休業との使い分けを考えましょう。
当連載の第1回で、「介護休業は、介護保険サービスを手配したり、施設入所などの手続きなどを進めることにあてる」と述べました。つまり、介護を続けるための多様な社会資源を探し、コーディネートしていくための仕組みと言えます。
通院への付き添いやケアマネジャー等との打ち合わせに
しかしながら、社会資源による支援を受け続ける中では、たびたび家族のかかわりが必要になる場面もあります。例えば、本人の通院時の付き添い。ホームヘルパーによる通院の送迎は可能ですが、病院内での介助や見守り、診察の同席は難しく、介護保険を使わない自費サービスでは高額になってしまい、家族が付き添いをせざるをえないことも多いのです。
また、ケアマネジャーが定期的に本人の状況をチェック(モニタリング)する際、家族が同席すれば日々の状況を伝えやすいこともあります。施設に入っている場合でも、本人の状態によって支援計画の変更が必要な場合、家族にも説明して納得を得ることが必要です。そうしたケースで家族が時間を取るとなれば、やはり「介護休暇」の活用が有効です。
介護休暇を取得する際は口頭での
申し出でもOK
では、実際に「介護休暇」を取得するには、どのような手続きが必要でしょうか。取得には会社への申し出が必要ですが、書面だけでなく口頭での申し出でも取得は可能です。
ただし、会社によって書面の様式を定め、申し出時に記入を求めることもあります。そうした申し出の方法については、就業規則で定められています。就業規則がよく分からない場合は、会社の総務課などにまずは口頭で申し出ましょう。
今の職場で「介護休暇が取りづらい」という場合
「介護休暇を取得すると職場に迷惑がかかる」と思う人もいるかもしれませんが、介護休暇の取得は法律で定められた働く人の権利なので、取得を自重する必要はありません。
問題は、「会社が人手不足のために、自分が介護休暇を取得すると業務が回らない(会社側が自分の仕事を補完する手配をしてくれない)」というケースや、「そもそも介護休暇を願い出ても、会社側が認めてくれない」といったケースでしょう。このように、会社側の対応に問題があるケースについては、都道府県の労働局に相談しましょう。
ちなみに、2025年4月から、家族の介護が必要となった社員への介護休業・休暇の利用についての意向確認が会社に対して義務づけられます。それを機に、介護を担う社員への支援体制を強化する会社が増えていくことが期待されます。
介護休業・休暇だけでなく、そのほかにも介護と仕事の両立を支援する仕組みがあります。次回は、介護休暇の「+α」となる仕組みについて解説します。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。
著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。