まずは介護休業制度について知る。2025年4月から改正も
仕事を続けながら家族の介護に
かかわるには?
総務省の調べでは、2022年に「家族等の介護・看護のために前職を離職した人」の数は年間10.6万人にのぼります。うち8.3万人は「無業者」となっています。いったん「無業者」になると、家族にかける介護費用のねん出も難しくなる恐れがあります。
大切なのは、できるだけ仕事を続けながら家族の介護にかかわることですが、そのためには、仕事と介護の両立を社会的に支援する仕組みが不可欠です。この仕組みを法律で定めたのが「介護休業制度」です。
介護休業は通算93日、3回まで
取得可能
介護休業制度は、1995年に法制化(努力義務)しました。その時々の当事者ニーズを受けて何度か法改正が行われ、現状での介護休業制度は以下のようになっています。
「公的介護保険の要介護認定を受けているか否かにかかわらず、要介護状態にある家族(常時2週間以上の介護を要する人)を介護しながら働く人を対象に、対象家族ひとりにつき3回まで、通算93日間仕事を休むことのできる権利を付与する」
という具合です。
休業している間の収入については、雇用保険の介護休業給付が支給されます。給付額は実際に受け取る予定の給与の67%で、最大34万7,127円となっています。
2025年4月から社員を雇う
事業主の義務も強化
ただし、「自分がいないと部署の仕事が回らない」という人もいるかもしれません。その点では、会社側が介護休業の取得について、どこまで協力的になれるかもカギとなります。
そこで、2024年に再び法律が改正されました。焦点は「対応する会社(事業者)側の責務」が強化されたことで、2025年4月から施行されます。
具体的には、会社側に以下のことを義務づけました。
①働く人が家族の介護に直面していると申し出た場合、介護休業の利用などについて個別で制度を周知したり、本人の意向を確認すること。
②働く人に向けて、早期の段階(介護保険の第2号被保険者となる40歳など)で制度についての情報提供を行なったり研修を実施することです。
介護休業とは別に取得できる
「介護休暇」
もっとも、介護休業だけでは、「働きながら介護をする」という環境を整えるのはなかなか困難です。介護休業の93日というのは、その期間に自ら介護を行なうというより、介護保険サービスを手配したり、施設入所などの手続きを進めることにあてるものです。
例えば、「本人の通院に付き添うなどの時間を確保したい」といったニーズをまかなうにはどうすればよいでしょうか。それを叶えるのが、介護休業とは別に取得できる「介護休暇」です。次回は、この「介護休暇」が具体的にどのようなものなのかを解説します。
◆介護休業法上の「要介護状態」についての詳しい解説は以下をご覧ください。
【執筆者プロフィール】
田中 元/たなか はじめ
昭和37年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。
高齢者の自立・介護等をテーマとした取材、執筆、ラジオ・テレビ出演、講演等を行なっている。
著書に『介護事故・トラブル防止完璧マニュアル』『全図解イラスト 認知症ケアができる人材の育て方』(ぱる出版)など多数。