シニア向けパックツアーは安心、快適!
シニア世代の方に「楽しみは何ですか」と聞くと、結構な確率で「旅行」と返答されます。
そんななか、「もし、旅行中に具合が悪くなったら......」との心配から「最近、行けていない」と残念そうに話す人に会うことがあります。
パックツアーは、国内にしろ、海外にしろ、出発時間や集合時間に追われ、頻繁に腕時計を見ることになりがちです。トイレが近かったりすると、「ほかの参加者に迷惑をかけそう」と不安になるのかもしれません。
かおるさん(50代)は母親(70代)と一緒に、年に1回、バスのパックツアーに参加しています。母親は身体が弱っており、介護保険の要介護認定は「要支援2」。
「数年前までは、ハードなスケジュールのツアーでも平気でしたが、だんだん難しくなりました。旅行社の窓口で相談すると、シニア向けのパックツアーを勧められました」とかおるさん。
多くの旅行会社がシニア向けの旅を用意しています。「シニア/パックツアー」とインターネット検索してみましょう。
定員を少なくして、バスのなかもゆったり。短い間隔で休憩をとるので、トイレが近くても安心です。歩く距離を短くしたり、添乗員をふたり体制にしていたりと各社、工夫をこらしています。
「これまで参加していたツアーに比べると多少割高ですが、これなら母も問題なく参加できるので、年に1度のぜいたくと割り切っています」とかおるさんは微笑みます。旅行から戻ると、すぐに、「来年はどこに行こう」との対話が始まり、母親の元気の源になっているようです。
「私たちは、母娘のふたり旅ですが、ひとり参加の方もいらっしゃいますよ。おひとりの方は、バスの2席をひとりで使っておられました」。シニア向けのバス旅行のなかには、「ひとり2席利用」や、「ほかの参加者との相席なし」を確約しているツアーがあります。
かおるさんの母親は要支援2ですが、もう少し重い要介護度で、例えば車いすを利用しておられる方も参加できるバリアフリーツアーもあります。
国内ばかりか海外へ出かけるツアーも。介護や医療の専門職が同行するなど、「旅をあきらめない」ためのきめ細やかなサービスが用意されています。
また、家族だけで楽しめるよう介護タクシーでの旅行をサポートする会社なども。もちろん、無理をして旅行することはありません。けれども、行きたい場所があり、かかりつけ医の許可を得られるなら、一歩を踏み出してみてもよいかもしれません。
【執筆者プロフィール】
太田 差惠子/おおた さえこ
介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長。
1994年頃より高齢化社会を見すえながらの取材、執筆を開始。96年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げる。2010年立教大学大学院にて、介護・社会保障・ワークライフバランスなどを体系立てて学ぶ。著書多数。