認知症は食事で防げるのか?
認知症と食事の関係は、「何を食べれば予防できるのか」という関心で語られることが多いテーマです。ここでは、最新の研究を参照しながら、食事が認知症リスクとどのように関係しているのかを整理します。
近年の代表的な整理として、2024年のLancet委員会(※)の報告があります。この報告では、認知症の約45%は、生活や環境にかかわる要因への対応によって予防、または発症を遅らせる可能性があるとされています。ただし、これは一つの要因の効果ではなく、複数の要因が重なった結果として示された推計です。
修正可能なリスク因子としては、「教育不足、難聴、高血圧、肥満、過度飲酒、外傷性脳損傷、高LDLコレステロール、喫煙、うつ、社会的孤立、身体不活動、糖尿病、大気汚染、視力低下」の14項目が挙げられています。これらは人生の各時期に関与しながら、認知症リスクに影響すると考えられています。
一方、この45%という数字は、残りの約55%がこれらだけでは説明できないことも意味します。そこには加齢や遺伝といった変えにくい要因に加え、未解明の要素や測定しきれない影響も含まれます。そのため、認知症を単純にコントロールできるものと捉えることには慎重である必要があります。
では、食事はどのように位置づけられるのでしょうか。食事は14要因の一つとして直接挙げられているわけではありませんが、高血圧、肥満、糖尿病、高LDLコレステロールといった血管・代謝に強く影響します。これらは認知症リスクの中核にある要素であり、食事はそれらを通して間接的に関与すると考えられます。
この意味で、食事は「主役」ではありませんが、「土台」として位置づけることができます。
次回は「認知症リスク」にかかわる具体的な食物について述べます。
※ランセット委員会(The Lancet Commissions)は、世界的な権威を持つ医学雑誌『The Lancet』が主導し、国際的な専門家チームが医療・公衆衛生の重要課題についてエビデンス(科学的根拠)に基づき調査・分析・提言を行なう組織。
【執筆者プロフィール】
中村 考一/なかむら こういち
社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研修部長。
日本社会事業大学卒業、日本社会事業大学大学院修了。博士(社会福祉学)。
社会福祉士・介護福祉士。著書に『みんなで学ぼうその人を中心にした認知症ケア』(ぱーそん書房、2016)など。