認知症予防のために何を食べれば良いのか?
「認知症と食事」で注目されているのが「MIND食」です。野菜(特に葉物野菜)やベリー類、ナッツ、豆類、全粒穀物、魚を取り入れ、赤身肉やバター、揚げ物、菓子類を控える食事パターンで、観察研究では、この傾向を持つ人ほど認知症リスクが低いことが示されています。
その理由として、野菜やベリー類に含まれる抗酸化物質やポリフェノールによる炎症・酸化ストレスの抑制、ナッツや魚の不飽和脂肪酸による血管機能の改善、全粒穀物や豆類による血糖コントロールの安定などが考えられています。
一方で、赤身肉やバター、揚げ物、菓子類は、飽和脂肪酸や過剰なエネルギー摂取を通じて血管への負担を高める可能性があります。こうした点は、Lancet委員会で示された血管・代謝関連の要因とのつながりを見出すこともできます。
ただし、これらの多くは観察研究に基づく知見であり、「この食事をすれば防げる」という因果関係が確立されているわけではありません。現時点では、「食事は認知症に関連が示されている要因を支える生活の土台として重要ではないかと考えられる」という位置づけにとどまります。
それでも、食事は日常生活のなかで取り組みやすく、血管や代謝を通じて広く健康に影響します。「食事だけで決まるわけではない」という前提を持ちつつ、「確実に関与する土台の一つ」と捉えることが妥当でしょう。なお、認知症は生活習慣、社会的関係、環境などが重なって生じる現象です。
「何を食べれば防げるか」という問いに限定してしまうと、その捉え方はかえって狭くなります。重要なのは、発症の有無にかかわらず、一人ひとりがその人らしく暮らし続けられる条件をどう整えるかという視点です。
予防のために仲間と情報を共有し、生活を整えることは大切ですが、その関係が「ならないようにすること」だけに向いてしまうと、いざ認知症になったときに距離が生まれてしまう場合があります。
日々の食生活や健康づくりを通して誰かと関わり続けることそのものが、状態が変わったあとも一人ひとりを大切にし続けられる社会を育てていくという観点とあわせて大切にしていければと、私は感じています。
【執筆者プロフィール】
中村 考一/なかむら こういち
社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研修部長。
日本社会事業大学卒業、日本社会事業大学大学院修了。博士(社会福祉学)。
社会福祉士・介護福祉士。著書に『みんなで学ぼうその人を中心にした認知症ケア』(ぱーそん書房、2016)など。