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呼吸を整える運動・ストレッチ

一般公開日:2026.9.20

 呼吸に関連する筋肉を整えることは、単に「よく息が吸えるようになる」だけでなく、自律神経の調整や姿勢改善を通して、介護ストレス・介護疲れの軽減にもつながります。呼吸をしているとき、横隔膜、肋間筋(肋骨の間の筋肉)、腹筋群、背部の脊柱起立筋、さらには胸や肩まわりの小さな筋肉まで、全身の多くの筋が協調して働いています。これらが固くなったり、疲労してうまく動かなくなると、呼吸は自然と浅く速くなり、交感神経が優位な緊張状態が続きやすくなります。

 介護者は前かがみ姿勢や中腰が多く、胸郭(肋骨まわり)が固くなりやすいため、意識的にこれらの筋肉をケアしてあげることが重要です。まず、介護の合間にその場で簡単にできる胸郭と肩のストレッチを取り入れます。

【胸郭と肩のストレッチ】

①椅子に浅く腰かけ、背筋を軽く伸ばします。

②両手を組んで頭の後ろに当て、息を吸いながら肘を左右にひらいて胸を開きます。

③そのまま胸の前側がじんわり伸びる感覚を味わい、吐く息で力を抜きます。

 これを数回繰り返すだけでも、胸郭前面の筋肉がゆるみ、肋骨の動きが出やすくなります。また、肩の力みりきみを取るために、息を吸いながら肩をすくめるように耳に近づけ、吐きながら一気にストンと力を抜いて落とす動きも効果的です。介護現場で緊張が続いたときに行なうと、首・肩こりとともに呼吸のしやすさも変わってきます。

 次に、胸郭の側面や背中を柔らかくするストレッチも有効です。

【胸部の側面や背中を柔らかくするストレッチ】

①立った姿勢で頭のうえで両手を組み、息を吐きながら体を横に倒します。

②脇の下から肋骨の横あたりが伸びるのを感じながら、2~3呼吸キープします。

③反対側も同様に行ないます。

④さらに、背中側をゆるめるには、いすに座って両手を組み、腕を前に伸ばしながら背中を丸めて息を吐き切ります。このとき、肩甲骨の間が軽く広がる感覚を意識すると背部の筋緊張が和らぎ、背中側への呼吸(背中がふくらむ感覚)も得やすくなります。

 床やマットを使える環境であれば、「キャット&カウ(四つ這いで行なう背骨のエクササイズ)」もおすすめです。

【キャット&カウ】

①四つ這いになり、手は肩の下、膝は股関節の下に置きます。

②息を吐きながら背中を丸め、頭と骨盤を軽く内側に入れて「猫」のような姿勢をつくります。

③息を吸いながら胸を前に出し、背中をそらし、尾てい骨を少し上に向けて「牛」のような姿勢をつくります。

 この動きをゆっくりと呼吸にあわせて繰り返すことで、脊柱の周囲の筋肉がほぐれ、胸郭の動きも滑らかになります。背中や腰に負担がかかりすぎない範囲で、痛みのない範囲で行なうことが大切です。

 歩行や散歩の際には、リズミカルな呼吸法を意識することで、運動そのものがストレスケアの時間になります。

【リズミカルな呼吸法】

①「2歩かけて鼻から吸い、2~3歩かけて鼻または口から吐く」といった具合に、一定のリズムで吸って吐いてを繰り返します。

②慣れてきたら、「3歩吸って、4~5歩吐く」ように、吐く時間を少し長めにすることで、副交感神経が働きやすくなり、心が落ち着きやすくなります。

 大切なのは、無理に大きく吸おうとせず、「自然に心地よく続けられるペース」を守ることです。これらの運動やストレッチに共通して言えるのは、「動き」と「呼吸」をセットで整える点です。筋肉をほぐしながらゆっくりとした呼吸を行なうことで、身体的なこわばりと精神的な緊張の両方にアプローチできます。

 介護の現場は、自分のことを後回しにしがちですが、意外と簡単に、合間の1~3分を使って胸や肩、背中をゆるめ、呼吸リズムを整える習慣を持つことで、介護ストレスや介護疲れの蓄積を和らげることができます。

【執筆者プロフィール】

西野 英行/にしの ひでゆき

理学療法士。福祉用具専門相談員として介護業界で3年間勤務した後、理学療法士の資格を取得。
現在は訪問リハビリテーションに勤務。リハビリのブログ「未来のPT」を運営している。
著書『100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方』がある。

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