3.ハラスメント事例が発生した場合の対処(3/3)
ポイント3
状況に応じた利用者対応や
担当替えなど
先に述べたように、実態の掘り下げにはある程度の時間がかかります。しかし、その間に何らかの手を打たなければ、事象がエスカレートするなど、ほかの従事者に被害がおよびかねません。そこで、実態の掘り下げと同時並行で、暫定的な対応を行ないます。
まず、「加害者」である利用者・家族と面談機会を持つこと。管理者クラスなど組織の第三者が表に出るだけで加害者側へのプレッシャーとなり、一時的でも、その後のハラスメントのエスカレートや他従事者への被害波及を防ぎやすくなります。その時点で「ハラスメントの訴え」については表に出さず、あくまで「サービス提供向上のための再アセスメント」を名目とします。もちろん、居宅系であれば、担当ケアマネジャー等と連携しつつ情報共有を図っておくことが欠かせません。
この再アセスメントは、単に表向きというわけではありません。ハラスメントのなかには、利用者・家族が置かれている課題が原因の一端になっていることもあるからです。その後の再発防止策を講じるうえでは、そうした課題の解決も視野に入れる必要があり、そのための情報収集という意味も兼ねるわけです。
もう一つ、同時並行で早急に進めるべきは、相談者が二次被害にあわないようにするための緊急対処です。訪問系サービスなどの場合には、「担当替え」や「複数名体制」などが考えられます。
問題は、介護現場の人材不足が恒常化するなかで、事業所規模などによっては難しいケースもあることです。しかし、二次被害などが発生すれば、最悪の場合被害者の現場復帰が困難になり、かえって現場の人材不足に拍車がかかりかねません。肝心なのは、「担当替え」等は組織上不可欠なリスクマネジメントとして、常に想定をしておくこと。そのうえで、平時からの運営シミュレーションを構築しておくことです(図を参照)。
さて、組織的な実態掘り下げと同時並行での緊急対処が整ったところで、再発防止策を打ち出します。また、個別の再発防止策を講じるなかから類似のケースまで未然に防ぐノウハウが構築できれば、ハラスメントに対する組織防衛力を高めることにもつながります。次回は、そうした実践に踏み込みます。
被害の拡大を防ぐための
暫定的な対応等について

ハラスメント事例が発生した場合の対処